2024 年 105 巻 1 号 p. 39-42
アルコール性肝硬変で当院へ通院している80歳台の男性が,大量の血便を主訴に来院した.緊急上部消化管内視鏡検査では,Lg-f,F2の胃静脈瘤からの出血を認め,Cyanoacrylate注入による止血を準備していたところ,同部位から再出血し視野の確保が困難となった.このため,Sengstaken-Blakemore(S-B)チューブを挿入しバルーンによる圧迫止血を試みたが,食道内で胃バルーンを膨らませてしまい,食道に約10 cmにわたる裂創が形成された.再度,透視下でS-Bチューブを挿入しながら,胃静脈瘤出血点を圧迫しながら食道の裂傷をクリップで縫縮した.3日後に胃静脈瘤に対し内視鏡的硬化療法を施行した.4週間後,経過観察の内視鏡で裂創の閉鎖を確認し,食事を開始した.その後は胃静脈瘤の出血再発はなく,全身状態良好のため退院した.