2025 年 106 巻 1 号 p. 22-26
【背景】胃食道接合部(GEJ)は,胃内容物の逆流を防ぐ解剖学的要素から構成される.本研究では,胃食道逆流防止機構(Anti-reflux barrier:ARB)を動的に評価する新たなPhase conceptを考案し,各Phaseの所見を解析した.【方法】2024年2~4月に,内視鏡的内圧測定統合システム(EPSIS)を施行した胃食道逆流症状のない患者を対象に後ろ向き単施設研究を実施した.ARBの動態をPhase I(胃相),Phase II(LES相),Phase III(食道クリアランス相)に分類し,EPSISで測定した胃内圧(IGP)とARBの形態変化を評価した.【結果】対象30例の年齢中央値は58歳(IQR:46.5-68.8歳),男性20名,女性10名であった.Phase Iでは低圧(中央値6.75 mmHg)で80%の症例に噴門粘膜唇と小彎の縦襞を認めた.Phase IIでは中圧(中央値11.8 mmHg)で86.7%にScope holding sign(SHS)を確認した.Phase IIIでは高圧(中央値19 mmHg)によりSHSが解除され,80%で食道蠕動運動が観察された.【結語】Phase conceptは,胃食道逆流防止機構の動的変化を理解する新たな手法となる可能性がある.今後,逆流症状を有する症例での検討や他のモダリティとの相関解析が必要である.