2025 年 106 巻 1 号 p. 27-32
【目的】近年,鎮静剤を用いた内視鏡診療の需要が高まっているが,重篤な偶発症のリスクを伴うため,安全な周術期管理が不可欠である.当院では2021年に「鎮静の安全な実施のためのワーキンググループ(以下WG)」を多職種・多診療科で発足した.今回その取り組みと効果について検証した.【方法】WG発足前後での鎮静剤の使用状況および偶発症の発生状況を比較検討した.【結果】WGの主な取り組みは,院内ガイドラインの作成,全身麻酔管理対象症例の明確化,院内教育体制の構築,プロポフォール使用認定制度の導入,プロポフォール使用プロトコルの作成,鎮静剤使用および偶発症の全数把握と検証である.WG発足前の2019年における内視鏡室でのプロポフォール使用件数は9件,ミダゾラム使用件数は2172件であり,鎮静処置時に重篤な偶発症を1件認めた.一方,発足後の2023年にはプロポフォール使用件数が222件,ミダゾラム使用件数が3850件となり,軽微な偶発症(SpO2<90%)をプロポフォールで4件,ミダゾラムで9件認めたが,重篤な偶発症は発生しなかった.また,麻酔科管理下で手術室にて行われたESD治療件数は,2019年の73件から2023年には94件に増加していた.【考察】WGの取り組みにより,内視鏡室でのプロポフォールを用いた鎮静が安全に実施されていることが確認された.