2025 年 106 巻 1 号 p. 33-37
【背景】上部消化管内視鏡検査(EGD,Esophagogastroduodenoscopy)の本邦での75歳以上の後期高齢者の割合は増加している.高齢者は併存疾患も多く,鎮静剤を用いるEGDには慎重な対応が求められる.【目的】後期高齢者に対する当院の外来・入院EGDの鎮静の現状を明らかにする.【方法】2022年7月から翌年6月に外来・入院EGDを施行した75歳以上の患者を対象とし,患者背景,検査背景,退出遅延割合,偶発症を検討した.検査後プロポフォール・塩酸ペチジン使用時は30分,ミダゾラムは1時間を基本とした休憩を行い,意識レベル,運動機能,呼吸循環状態に基づいた退室基準を満たすことを確認し帰宅・帰室とした.退出基準を満たさず休憩延長となったものを退出遅延と定義した.退出遅延のリスク因子に関し多変量解析を行った.【結果】検討対象は2253名,2826件.年齢中央値は79歳,検査目的は術前精査,スクリーニング,サーベイランスが405,1717,704件.鎮静・鎮痛剤使用割合は全検査の41%,退出遅延割合は鎮静・鎮痛剤使用例の13.1%.退出遅延のリスク因子は女性・ミダゾラム・2剤併用であった.入院を要した偶発症は2例であった.【結論】後期高齢者に対するEGDは鎮静・鎮痛剤による偶発症が一定の割合で起こることに留意し,鎮静の適応や薬剤の種類,容量を検討すべきである.