抄録
ネパール王国において腹部愁訴のある症例(243例)を対象に上部消化管内視鏡検査を行った。その際に採取した生検切片を用いて,Helicobacter pylori(H. pylori)感染,背景胃粘膜を観察し,日本人有愁訴者(2,184例)と比較した。ネパール人,日本人の年齢層別H. pylori感染率をみると,ネパール人では39歳以下の陽性率が高く,ネパール人,日本人における陽性率のピークが異なっていた(各々40,50歳代)。これは,ネパールが発展途上国であることによると思われた。人種間(アーリア系,モンゴル系,インド系)の感染率に違いは認められなかった。両国間症例の年齢,性別,診断をマッチさせると,H. pylori感染率に差はみられなかった(各々49.5%,50.0%)。全対象症例中,ネパール人では14.4%,日本人では23.0%に消化性潰瘍がみられた(P<0.05)。ネパール人に胃癌,胃ポリープ(腺窩上皮型)は1例も認められなかった。マッチにより得られた消化性潰瘍35例の内訳をみると,ネパール人は十二指腸潰瘍(68.6%),日本人は胃潰瘍(71.4%)が最も多かった。H. pylori陽性ネパール人の前庭部胃炎に対する胃体部胃炎の比(C/A比)は全年齢層において1より小さく,前庭部優位型胃炎であった。一方,日本人は60歳を境に前庭部優位型胃炎から胃体部優位型胃炎に変化していた。胃体下部小彎側の腺萎縮スコア,腸上皮化生スコアはネパール人に比し日本人で有意に高かった。これらの相違が,日本人に萎縮性胃炎,胃癌の多いことと関連しているように思われた。