症例は31歳男性。精神遅滞で異食の傾向にあった。嘔吐,腹痛を主訴に近医受診。腹部単純レントゲン検査にて腹腔内に異物を認め当院へ入院した。上部消化管内視鏡検査では胃内の食物残渣に埋もれる複数の金属片が存在した。金属片は幅5mm,長径は様々であり辺縁は不整で一部は鋭利で噛み切って誤飲したものと推測した。消化管損傷や鉛片の可能性を考慮し内視鏡的にすべて摘除した。これらの金属片は入所施設のカーテン内のおもりとして使用されている鉛片であった。その後外来にて経過を観察するも原因不明の腹痛と倦怠感,貧血の進行を認め意識消失にて再入院となった。経過から鉛中毒を疑い血中鉛濃度を測定したところ84µg/dlと高値を示し鉛中毒と診断した。現在までに誤飲による鉛中毒の報告例はなく,興味ある症例と考え報告する。