Progress of Digestive Endoscopy
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臨床研究
Helicobacter pylori感染,血清ペプシノゲン,背景胃粘膜からみた抗壁細胞抗体
松久 威史津久井 拓山田 宣孝
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2007 年 71 巻 2 号 p. 34-38

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抄録

 Helicobacter pyloriH. pylori)の長期感染により萎縮性胃炎が発生するが,萎縮を規定する因子については明かでない。抗壁細胞抗体(APCA)とH. pylori感染,血清ペプシノゲン(PG),背景胃粘膜の関連性を内視鏡検査を行った778例において検討した。APCAは間接蛍光抗体法(FA法)により測定し,20倍以上を陽性とした。PGI,PGIIは化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)により測定した。PGI 30ng/mL以下かつPGI/II比2.0以下を(3+),PGI 50ng/mL以下かつPGI/II比3.0以下を(2+),PG I 70ng/mL以下かつPGI/II比3.0以下を(1+),それ以外を(-)とした。年齢,性別をマッチさせたH. pylori陽性例,陰性例(187組)のAPCA価,APCA陽性率に有意差は得られなかった。APCAが胃体部萎縮を規定する直接の因子ではない可能性を示している。また,年齢,性別による相違もみられなかった。H. pylori陽性PG(3+)群のAPCA陽性率(30.2%)はPG(-),PG(1+),PG(2+)群に比し有意に高く,胃体上部大彎側,胃体下部小彎側の腺萎縮スコアもPG(3+)群で高値であった。H. pylori陰性PG(3+)群のAPCA陽性率もPG(-,1+)群に比し高値で,胃体部腺萎縮スコアも高かった。前庭部優位型胃炎に比し胃体部優位型胃炎でAPCA陽性率が高い傾向にあったが,有意差はみられなかった。H. pylori感染,APCAの存在に加え環境因子が萎縮性胃炎の進展に影響している可能性が示唆された。また,H. pylori陰性例においても萎縮が少数例にみられることを考慮すると,食塩などの環境因子を含めた検討が必要である。

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© 2007 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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