抄録
大腸検査に空気でなく二酸化炭素を用いると,腸管からの吸収が速やかで腹部膨満が避けられ,肺からの排出も極めて速く安全域も広いことがわかり,1970年代半ばから大腸二重造影検査や大腸内視鏡検査の苦痛解消に推奨されるようになった。当院では下部内視鏡検査の全例に二酸化炭素を使用しており,前任の病院の症例1,254例を併せて,1982年から5,330例を経験し,有効性を実感している。また上部内視鏡でも必要に応じて用いている。例えば上部下部内視鏡を一度に施行する場合,イレウスの既往がある場合などが適応と考えている。今後の応用範囲は広いと思われる。しかし二酸化炭素のこのように顕著な有効性にもかかわらず,発信元の欧米でもこれを利用する内視鏡医は何故か未だに少数派のようであるし,本邦でも支持されるようになったのは最近のことである。そこで,我々は1982年以来の多数症例の経験に基づく見解を述べ,併せてレビューを試みた。なお使用する液化二酸化炭素は,石油化学プラント,石油精製プラントなどの副生ガスを有効利用するもので,地球環境問題の新たな発生源ではないとのことである。しかも安価でポータビリティーも高いため,この論文が二酸化炭素内視鏡法導入の一助となれば幸である。