抄録
【背景】近年,内視鏡機器の進歩に伴い,多くの頭頸部表在癌が発見されるようになった。しかし,経口内視鏡での咽喉頭観察では,咽頭反射のために詳細な検索が困難なことも経験する。経鼻内視鏡は,咽頭反射の少ない検査法として知られている。【目的】FICEを標準装備した経鼻内視鏡による頭頸部表在癌発見能を明らかにする。【対象と方法】当科において2009年10月~2011年10月までにFICE併用経鼻内視鏡観察を行った食道癌または頭頸部癌患者317例(食道癌274例,頭頸部癌112例,重複69例)を対象とし,頭頸部表在癌の拾い上げにつきretrospectiveに検討した。FICEはAdvanciaモード0,5,8を使用し,通常観察とほぼ同時に利用した。【結果】経鼻内視鏡により26例34病変(8.2%)の頭頸部表在癌を発見した。FICEによる領域強調と正常血管透見の消失が主たる所見となり,全例生検で扁平上皮癌と診断した。部位別では下咽頭21病変,中咽頭4病変,口腔底4病変,軟口蓋3病変,頬粘膜1病変,喉頭1病変であった。Valsalva法による咽喉頭展開により,従来法では死角となっていた下咽頭深部に表在癌を3病変発見した。15病変(44%)は上皮内癌であり,経鼻内視鏡でも十分早期発見が可能であった。【結語】FICE併用経鼻内視鏡は,食道癌・頭頸部癌ハイリスク症例の頭頸部表在癌拾い上げに有用である。