Progress of Digestive Endoscopy
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症例
直腸カルチノイドと右側型潰瘍性大腸炎を合併した1例
南雲 大暢小川 史洋安達 哲史江川 優子市原 広太郎齋藤 訓永多田 正弘風間 博正
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2014 年 84 巻 1 号 p. 60-63

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抄録

 症例は生来健康な58歳,男性。2012年11月に水様下痢・嘔吐で受診。整腸剤のみで下痢は改善した。念のため施行した大腸内視鏡検査にて直腸に径8mm黄白色調の隆起性病変を認め,生検でカルチノイドと診断した。腹部CTで転移を疑う所見はなく,超音波内視鏡で病変は粘膜下層に留まると考えられ,2013年2月に内視鏡的切除(結紮リング法 : EMR─L)を行った。その際に上行結腸の一部に血管透見消失像を認め,生検にて潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis : UC)に矛盾しない所見を得た。病変は軽度であり症状もなく経過観察としていたが,2013年5月に行った大腸内視鏡検査では,盲腸から上行結腸の粘膜は細顆粒状で黄白色の点状粘液付着を認め,典型的なUC像に変化していた。長期罹患例で全大腸炎型のUCに癌やdysplagiaの発生が多いことは知られているが,カルチノイドの報告は少ない。またUCに合併したカルチノイドは,主に長期罹患例や直腸に炎症が存在する症例であり,自験例のように初発の右側型UCでカルチノイドを合併した報告はこれまでにない。またカルチノイドの内視鏡治療後に増悪しており両者の関連性について示唆に富む症例と考えられ文献的考察を加え報告する。

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© 2014 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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