抄録
【目的】「大腸癌治療ガイドライン2014」では,内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection : ESD)適応症例は粘膜内癌,粘膜下層への軽度浸潤癌で,肉眼型,大きさは問わないとされており,精度の高い術前診断が求められている.本研究は,VI型Pit patternとNBI(narrow band imaging)拡大観察による大腸T1a癌とT1b癌の鑑別診断の現状と診断不一致例の検討を行った.【対象・方法】2011年1月~2014年12月に当院で施行された大腸ESD522例中,VI型Pit pattern 283例 (男162例,女121例,平均66±11.3歳)286病変を対象とし,1)内視鏡治療の適応となるTis-T1a癌とT1b癌の鑑別診断能,2)診断不一致例における内視鏡所見の特徴を検討した.【結果】1)VI型pit patternと深達度の関連では,VI軽度不整264例中Tis-T1a 240例(91%),T1b以深24例(9%),VI高度不整22例中Tis-T1a 10例(45.4%),T1b以深12例(54.6%)であり,感度96.0%,特異度33.3%,正診率88.1%であった.NBI拡大観察においては,C1,C2,CP-ⅢA 248例中Tis-T1a 225例(90.7%),T1b以深23例(9.3%),C3,CP-ⅢB 38例中Tis-T1a 27例(71.0%),T1b以深11例(29%)であり,感度89.4%,特異度32.3%,正診率82.5%であった.2)VI軽度不整で深達度T1b以深の24症例〔隆起 : 9,laterally spreading tumor(LST)・陥凹 : 15〕の各所見別頻度は,最大型30mm以上(66.6%),陥凹(62.5%),小型不整形でCrystal VIolet(CV)染色性の低下したVIllous area(54.1%),ひだ上の局在(54.1%),緊満感(37.5%),粗大結節(37.5%),白班(20.8%)の頻度が高い結果であった.一方,VI高度不整で深達度がT1aの10例(隆起 : 1,LST・陥凹 : 9)のうち5例はCV染色不良であり,見返しで本来は判定不能と評価すべきであった.残り5例においては強い発赤,陥凹,粗大結節表面の平坦化,VI高度不整の範囲5mm以下の所見を各々60%の頻度で認めた.【結語】VI型Pit patternとNBI拡大観察によるT1a-b癌の鑑別診断ではピットフォール的症例が存在する.その診断精度を止揚するにはSM浸潤を示唆する通常所見を加味した動的観察,またESD術中の癌性および非癌性線維化の評価などの対策が必要と考えられた.
