2017 年 90 巻 1 号 p. 46-50
消化管出血の一因である急性食道粘膜病変(AEML)は,比較的稀な疾患でありその臨床像は十分に解明されていない.そこで臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.2008年1 月1 日から2016年4 月30日までに当院でAEMLと診断した13例について検討した.食道粘膜が黒色調に変化している黒色食道は6 例,黒色を呈さない非黒色食道は7 例であった.平均年齢は67±15歳,男女比は8 : 5 であった.併存疾患として悪性腫瘍を7例(54%),糖尿病を5 例(38%)に認めた.発症契機として吐下血が11例(85%)と最も多く,死亡した2例を除く11例(85%)は速やかに症状が改善した.また,黒色食道と非黒色食道の臨床背景について比較検討した結果,黒色食道では男性に多い傾向があり,有意に喫煙歴を多く認めた.内視鏡所見では罹患範囲がより広範囲であった.なお,死亡した2 例は黒色食道であった.AEMLの発症には微小循環不全および胃酸逆流の関与などが示唆されており,当科の検討から,喫煙はリスク因子の一つになり得ること,胃酸分泌抑制剤が必ずしも予防効果を発揮しないことが示唆された.また,黒色食道はより重篤な病態で発症すると考えられた.