Progress of Digestive Endoscopy
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原著
胃ESD後の発熱に関する因子の検討
田畑 裕太堀川 洋平佐藤 紗弥香伏見 咲畠山 遥
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2021 年 99 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

[背景と目的]内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) は表層型胃腫瘍に対する標準治療となっている. しかし, 術後経過中に時折認められる発熱は, その臨床的意義が特定されていない. そこで我々は, これらを明らかにすることを目的にpost-ESD elocrocoagulation syndromに着目して本検討を行った. [方法]2014年~2020年までの7年間に当院でESDを施行した表層型胃腫瘍422症例を対象として後方視的に検討した. ESD術後に38.0°C以上の発熱を来した症例を発熱群 (n=79) とし, 非発熱群 (n=343) と傾向スコアマッチング法を用いて患者背景, 治療結果につき比較検討した. [結果]傾向スコアマッチングの結果, 79ペアが生じた. 発熱群と非発熱群の比較では, 予防的止血術を施行した穿通枝の本数 (P=0.017), 白血球数 (P<0.0001), 及びCRP値 (P=0.0002) に有意差を認めた. その他の治療結果に有意差を認めなかった. 病理組織学的検討では, 穿通枝周囲の固有筋層に熱変性が指摘された. [結論]本検討により穿通枝に対する予防的止血術が過ぎると, electrocoagulation syndromeとして発熱が生じる可能性が示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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