消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
大腸sm癌の超音波内視鏡および粘膜下局注法による深達度診断の有用性についての検討
小林 清典勝又 伴栄高橋 裕之横山 薫堂森 興一郎木田 光広五十嵐 正広西元寺 克禮山田 伸夫
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1996 年 48 巻 p. 80-84

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抄録

 大腸sm癌の超音波内視鏡(EUS)を用いたsm浸潤度診断と,粘膜下層への生食水局注法(局注法)により判定したlifting signの有無とsm浸潤度との相関について検討した。対象はEUSを施行したsm癌55病変(sm1 18,sm2 17,sm3 20)と,内視鏡下局注法でのlifting signの判定を行った19病変(sm1 9,sm2 7,sm3 3)である。Lifting signの判定基準は,局注法により腫瘍全体が浮揚するものをlifting sign陽性,腫瘍の一部が浮揚しないものを偽陽性,腫瘍全体が浮揚しないものを陰性とした。EUSによる大腸sm癌の深達度診断正診率は76%(42/55病変)であった。sm浸潤度診断の正診率sm1 50%,sm2 59%,sm3 75%であり,sm浸潤度が深くなるほど診断成績が良好であった。治療法選択という観点からEUS診断について検討すると,sm1の19病変で,EUSにより内視鏡的治療が可能なm癌-sm1と診断できたのは16病変(89%),sm2,sm3の37病変で,外科手術が必要なsm2以深の深達度と判定できたのは33病変(89%)であり,ともに診断成績が良好であった。局注法によるlifting signの有無とsm浸潤度との相関については,sm1のsm癌は全例lifting signが陽性,sm3は全例陰性であった。しかしsm2のsm癌では,lifting signの評価が一定せず境界病変と考えられた。以上の検討より,超音波内視鏡および内視鏡下局注法によるlifting signの判定は,大腸sm癌のsm浸潤度診断さらに治療方針の決定に有用であると考えられた。

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© 1996 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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