消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
発病後短期間で癌化した潰瘍性大腸炎の1例
長場 静香小林 清典佐田 美和吉澤 繁五十嵐 正広勝又 伴栄西元寺 克禮大谷 剛正三富 弘之
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2000 年 57 巻 2 号 p. 71-74

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抄録

 患者は21歳,女性。15歳時に下痢,貧血を認め当院小児科を受診。全大腸炎型潰瘍性大腸炎(UC)と診断され,副腎皮質ステロイド剤を中心とした薬物療法で加療するも,ステロイド依存性で再燃を繰り返していた。1999年8月に下血と下腹部痛を認め近医に入院。腸閉塞を伴う直腸癌と診断され当科に転院となった。大腸内視鏡所見で,直腸に全周性狭窄を伴う腫瘍を認め,生検で低分化腺癌と診断された。回腸への瘻孔形成がみられたが,遠隔転移は認めなかった。UCに合併した進行直腸癌と診断し,大腸亜全摘,腹会陰式直腸切断術を行った。病理組織学的には,直腸歯状線から口側22cmまで結節状隆起が連続し,同部に低分化腺癌が認められた。癌は直腸壁を越えて回腸に直接浸潤し,リンパ節転移が陽性で,一部にhigh grade dyplasiaの合併も認めた。左側~全大腸炎型で活動性が高いUCは,若年者でも短期間で癌化する場合があり注意が必要である。

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© 2000 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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