水田として利用されている土壌の有機物は,その他の土壌の有機物とは,いくつかの点で異っていると予想されるにもかかわらず,前者の土壌の有機物の特徴を系統的に研究する試みは,これまでにあまりなされてはいないようであある。性格が著しく異なる多種類の土壌が水田として利用されている事実,および同一種類の土壌でも,水田として利用されている期間の長短,あるいは水田としての利用形式の差異によって,土壌有機物の性格が左右される事実などが,このような研究を阻害していたと思われる。本論文では,筆者の手元にある少数のデータを利用して,主として沖積土につき,地下水位を下げ,水田として利用している間に,つぎつぎに生じる土壌の環境の変化に対応して表われてくる土壌有機物の性質の変遷の一端を述べたいと思う。