ペドロジスト
Online ISSN : 2189-7336
Print ISSN : 0031-4064
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巻頭言
論文
  • 中塚 博子, 木村 有希, 山田 晋, 野口 有里紗
    2024 年 68 巻 1 号 p. 3-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    静岡県富士山西麓の朝霧高原根原地区には,在来イネ科草本を主体とした半自然草原が分布する。根原地区では,富士由来の溶岩流と天守山地からの沖積堆積物が土壌母材として混在する境界域に,ススキ優占の草本群落(地点1)とヨシ優占の草本群落(地点2)が隣接する地点が存在する。本研究では,上記イネ科草本群落に位置する土壌の断面形態と理化学的特徴を明らかにし,両イネ科草本が分布を異にする要因について考察した。調査地点間で土壌断面形態と理化学性は異なり,地点1は,下層に亜角~亜円大礫が存在し,富士由来火山放出物の再堆積物を母材とした土壌であった。また,日本土壌分類体系(2017)では,厚層アロフェン質黒ボク土に分類された。一方,地点2は39~65 cmに埋没腐植層が観察され,酸性シュウ酸塩溶液可溶のAl,Fe,Si含量,アロフェン含量およびリン酸吸収係数から,火山放出物由来の土壌物質に沖積堆積物が混入して再堆積した土壌であることが示された。日本土壌分類体系(2017)では,埋没腐植質アロフェン質黒ボク土に分類された。また,地点1は地点2と比較して,礫と粗砂含量,表層の飽和透水係数および無機態窒素量が高くなった。一方,地点2は地点1と比較して,交換性カリウム量と可給態リン酸量(ブレイ第二法)が高い傾向であった。以上から,ススキ優占の草本群落とヨシ優占の草本群落は,土壌母材(火山放出物と沖積堆積物)の堆積割合が異なり,その違いに起因する礫と粗砂含量,表層の透水性および可給態養分(P,K,N)の違いにより分布が異なったと考えられた。
  • 高橋 正, 能登 春希, 山田 大介, 山津田 美登莉, 安田 陽, 早川 敦, 石川 祐一, 菅野 均志
    2024 年 68 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    秋田県北部の土壌における黒ボク特徴およびその生成を検討することを目的に十和田カルデラ付近から男鹿半島にわたる地域の15地点において,表層約30 cmまでの土壌を採取した。土壌試料の酸性シュウ酸塩可溶成分,リン保持量などの黒ボク特徴に関する性質を調べた。また,このうち9地点の土壌試料の中砂画分(粒径0.05~0.2 mm)に含まれる火山ガラスに関しては,クリプトテフラの分析手法を用いて火山ガラス一粒毎の主元素組成を走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光法で分析し,起源テフラの識別を行った。その結果,土壌はすべて,黒ボク特徴,未熟黒ボク特徴,または,ばん土質(褐色森林土)な性質を示した。既報のテフラ分布図から予想されたとおり,すべての土壌は十和田火山由来(主に十和田a火山灰(915年))と識別される火山ガラスを含み,噴出源に近いほどその影響は大きかった。約半数の地点では白頭山-苫小牧火山灰(946~947年)と識別される火山ガラスも含まれていた。男鹿半島の土壌では,半島西部の戸賀カルデラ由来の戸賀軽石(42万年前)とみられる火山ガラスも含まれているのが注目された。既報のテフラ学の情報とクリプトテフラの識別を併用した手法による起源テフラに関する知見は,黒ボク土および類縁土壌の生成と分布の理解に有効となることが示唆された。
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