近代農業技術が土壌生態系に及ぼす影響について(<シンポジウム特集>土壌と生態系(つづき)-第15回ペドロジスト・シンポジウム-,20周年記念号)

抄録

ここでいう土壌生態系とは,土壌内に生息する植物根・土壌動物・土壌微生物とそれをとりまく非生物土壌環境とが,お互いに密接な相互作用によって結びつけられて,全体として一つのシステムをつくっていることを意味する。このような観点に立つと,農業技術の行使は,目的とする作物以外に,土壌生態系の構成要素である作物根以外の土壌生物群集と非生物土壌環境にも何らかの影響を与え,そのことがひいては作物の生育にも影響することが予想される。しかしながら,作物以外の構成要素,土壌生物群集と無機的土壌環境に対する農業技術行使の影響に関する研究はきわめて少ない。本稿においては,筆者が集めた限られたいくつかのデータを紹介して,問題提起の役割をはたせれば幸いである。まず,作物生産の一環として重要な肥沃度と土壌生態系とのかかわりあいについて若干考察してみよう。