ペドロジスト
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パラグアイ国イポア湖北西部沖積湿地の土壌とその理化学性
後藤 逸男蜷木 翠
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1982 年 26 巻 2 号 p. 108-122

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抄録

パラグアイ国アスンシオンの南約60kmに位置する沖積湿地約52,000haを対象として,農業開発計画のための土壌調査を行った。約100ヶ所の試坑調査による土壌断面形態と理化学分析結果に基づいて5種類の土壌に分類した。V型土壌を除き,土壌生成作用の極めて微弱な未熟土壌で居住の分化が発達していない。これらの中でI, II, IV型上壌は表層下に緻密な硬盤層(粘土盤またはフラジ盤)を有して,下方への通気,透水を阻止している。この硬盤層が地区内の排水不良の主因をなすと共に,その有無が土壌の理化学性に特異な影響を及ぼしている。表層は酸性を呈するが下層は中性ないし弱塩基性を呈し,交換性塩基に富む。I型土壌は特に下層土の交換性ナトリウムが多く,電気伝導度が高い。I, II型土壌の表層は乾季にある程度乾燥するが,III型土壌は年間を通じて表面停滞水が存在する。III型土壌は前者に比べて土性が粗く硬盤層を有しない。また,酸性を呈し交換性塩基量が少ない。I〜IV型土壌の粘土鉱物はモンモリロナイト,イライトを主体として,カオリン鉱物を混有する。V型土壌は腐植に富む黒褐色表層を有して,乾季には亀裂を生じる。粘土含量が高く,モンモリロナイトを主要粘土鉱物とする。弱酸性を呈するが,交換性塩基に富む。アメリカ合衆国包括的土壌分類ではI〜IV型土壌がHaplaquent. V型土壌がPellucertに分類される。また,FAO/UNESCOの分類では前者がEutric Gleysols,後者がPellic Vertisolsとなる。最後に,本調査は国際協力事業団によるパラグアイ国イポア湖北西部農業開発計画調査として,(株)内外エンジニアリングが実施したもので,筆者らは土壌担当者としてこれに協力参加した。現地調査に際して終始御協力頂いた関係各位に感謝いたします。

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© 1982 日本ペドロジー学会
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