1993 年 37 巻 1 号 p. 2-14
愛知県設楽郡作手村大野原湿原の40,130,170cmの泥炭試料について,固体高分解能^<13>C NMR分析を行ない,有機成分の変性過程を追跡した。i)主として植物遺体よりなる粗画分(2mm以上)は飽和炭素成分に富んでおり,年代経過と共にメトキシ炭素及び糖の炭素が減少した。ii)細画分(2mm以下)でも,不飽和炭素に比し飽和炭素が多く,粗画分よりカルボキシ・エステル炭素及びメチレン等脂肪族炭素は多い傾向があった。年代に伴う変化は不明瞭であった。iii)腐植酸画分は,細画分に比し,糖及びメトキシ炭素が少なく,オレフィン・芳香族炭素が多かった。130cm層においては,40及び170cm層に比べ,不飽和炭素成分に富むなど,規則性の乱れがあった。iv)黒ボク土の腐植酸と泥炭の腐植酸の^<13>C NMRスペクトルがよく似ていることから,周辺の陸地からの黒ボク土の流入があったものと推定した。