ペドロジスト
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台地水田土壌の水分環境と生成的特徴
浜崎 忠雄
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1993 年 37 巻 1 号 p. 28-40

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抄録

香川県綾川および本津川流域に広く分布する合地上の疑似グライ土および黄色土に由来する水田土壌について,生成的特徴と水分環境の年間変化を明らかにし,水稲耕作下の水分環境が台地水田土壌の生成的特徴の形成に及ぼす影響について考察した。1)疑似グライ土,黄色土に由来する台地水田土壌には,鉄・マンガンの顕著な溶脱集積を始め,作土の灰色化,糸根状・膜状斑紋の形成,次表層位での糸状斑紋,マンガン結核の形成,角柱状構造の発達,構造面や孔隙に添った灰色化と雲状斑の形成,圧密化など水稲耕作下で生成された形態的特徴が認められた。2)疑似グライ土に由来する台地水田土壌の日縦浸透量は2.4〜2.6mmで極めて小さく,黄色土由来の台地水田土壌のそれは3.5〜4.3mmであった。3)疑似グライ土に由来する台地水田土壌および作土直下まで疑似グライ化した黄色土では,灌漑期に見かけの地下水面は田面付近に達し,灌漑水は飽和浸透していた。作土で還元可溶化した鉄,マンガン及び易分解性有機物を含んだ灌漑水はゆっくりと浸透し,相対的に酸化的状態にある次表層位で雲状,糸状斑紋あるいはマンガン結核として集積し,一方で構造面を還元灰色化していると考えられた。4)団粒状の角塊状構造の発達した下層土をもつ黄色土では,灌漑期間中,次表層位に負圧帯が生じ,灌漑水は水田の法面を通して大気に接した開放不飽和毛管浸透をしていた。灌漑の初期〜中期にかけて不飽和浸透帯となる位置に,灌漑水,地下水どちらの還元化の影響もほとんど受けていない黄褐色土層があり,その上部に鉄,マンガンが集積していた。また,灌漑の初期〜中期の地下水面付近に形態的特徴から地下水の作用により弱い還元灰色化を受けているとみられる層の上端があった。5)非灌漑期の水分吸引圧-50kPa以下の乾燥は鋤床層および糸状,結核状の斑紋の形成に寄与し,-6kPa以下の乾燥は次表層位の角柱状構造の発達と圧密化に寄与していると推察された。

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© 1993 日本ペドロジー学会
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