ペドロジスト
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抽出温度が希水酸化ナトリウム抽出腐植の特性に及ぼす影響(2) : 室温抽出腐植の加熱処理による特性変化
山本 定博 俊正佐南谷 信龍飯村 康二
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1994 年 38 巻 2 号 p. 75-82

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抄録

0.5%NaOHで土壌から腐植を加熱抽出するとき,加熱処理が腐植の特性に及ぼす影響を検討した。黒ボク土,褐色森林土,赤黄色土,灰色低地土,泥炭土の15点の土壌試料から室温抽出された腐植(30℃,1時間振とう抽出)を沸騰水中で30分間加熱処理した結果,腐植組成,腐植酸の特性に以下のような影響が及んだ。1)加熱処理によって室温抽出腐植の約5%相当量が減少し,腐植組成にも大きな変化が生じた。すなわち,腐植酸が5〜30%減少し,その減少量に対応してフルボ酸が増加した。低腐植化度の腐植酸ほどその減少率が高かった。2)腐植酸の減少に伴い腐植酸のRFが上昇し,ΔlogKが低下した。A 腐植酸ではRFの変化が主で,A型以外の腐植酸ではRFと併せてΔlogKの変化も大きかった。3)紫外〜可視示差吸収スペクトル(=加熱処理後-加熱前)において,紫外部〜400nm以下の吸光度が腐植酸では大きく低下し,逆にフルボ酸では大きく増加した。加熱処理による腐植酸の光学性の変化は,腐植酸構造中の紫外部に吸収を持つ成分が離脱し,フルボ酸へ移行した結果,腐植酸中の暗色に色調を発現する構造の密度が相対的に増大したことに起因すると考えられた。4)腐植酸のFT-IR, ^1H-NMRスペクトルより,加熱処理の影響で離脱した物質は多糖類の様な炭水化物と推察された。

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© 1994 日本ペドロジー学会
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