ペドロジスト
Online ISSN : 2189-7336
Print ISSN : 0031-4064
中国・騰格里砂漠の土壌の特徴 : I. 土壌断面の特徴
山本 定博 俊正田熊 秀行田中 伸一邸 醒民
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 40 巻 2 号 p. 70-80

詳細
抄録

1) 中国・騰格里砂漠南縁の土壌調査を行い,砂漠土壌6地点及び鳥取砂丘1地点のの計7地点について,土壌断面の特徴を検討した。2) 砂漠の大部分を占める流動沙丘の粒径組成は細砂が主体であったが,鳥取砂丘は粗砂が主体であった。低地では土壌は湿っており,表層の一部には白色の塩の集積が見られ,植生も塩生植物であった。3) 黄河水の灌漑によって,シルト,粘土,細砂が耕地に運ばれ堆積した。果樹園では,32年間に黄河堆積物の厚さは約50cmとなった。1年間の堆積量は平均約1.5cmであった。しかしこの土層は相当堅く綴密であり,今後改良が必要と考えられた。4) 低地や排水が効果的に行われていない地域では表層の一部に白色の塩の集積が見られた。一方,排水が効果的に行われている地域では,持続的な灌漑農業が長期的に行われていた。5) 麦藁を利用した防風の方法(草方格)は,長い年月と極めて多くの労力を要するが,流動沙丘の表層を固定するのに有効な方法であった。6) 多量に塩の集積した土壌や灌漑の影響を強く受けた土壌もあるが,全体としては砂砂漠の影響を受けた若い未熟な土壌が多かった。

著者関連情報
© 1996 日本ペドロジー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top