ペドロジスト
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赤黄色土における低分子脂肪族カルボン酸の断面分布
谷 昌幸東 照雄
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1997 年 41 巻 2 号 p. 68-78

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抄録

沖縄本島北部の台地・丘陵地上に分布する土壌亜型を異にする2種類の赤黄色土におけるLACAの断面分布について分析を行い,以下の結果を得た。(1)各供試土壌試料中のLACA総量は,218.9〜543.6μmol kg^<-1>の範囲,無機質層位のみでは218.9〜314.2μmol kg^<-1>の範囲であり,黒ボク土,褐色森林土およびポドゾル性土とよく似た範囲であった。(2)2種類の赤黄色土,典型的赤黄色土と灰白化赤黄色土におけるLACA総量は,堆積腐植層においてはほぼ同様な値であり,0〜40cmにおける土壌深さを考慮に入れた加重平均値も似ていたことから,断面内への堆積腐植層からの有機物供給によるLACA生産量はほぼ同様であることが認められた。(3)無機質層位では,典型的赤黄色土は表層から下層にかけて水溶態および吸着態ともLACA量が減少するのに対し,灰白化赤黄色土では粘土の機械的移動による物理性の変化の影響を受け,LACA量の断面分布に顕著な変化が認められた。(4)灰白化赤黄色土におけるLACA総量,シュウ酸やクエン酸などのLACA量の断面分布は,ポドゾル性土のそれとは異なることから,灰白化赤黄色土の生成へのポドゾル化作用の関与は低いことが考えられた。(5)黒ボク土,褐色森林土およびポドゾル性土などの断面とは異なり,LACAの土壌表面の陰イオン交換部位への吸着に影響を及ぼす因子について,土壌コロイドに由来するアルミニウム・鉄の選択溶解によって得られた値を用いて相互関係を解析することは困難であった。(6)土壌型を異にする森林土壌間や褐色森林土の層位間で認められた水溶態LACA量と土壌溶液pHとの関係は典型的赤黄色土においてのみ認められ,灰白化赤黄色土では明確な関係が認められず,特異性がより顕著に示された。

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© 1997 日本ペドロジー学会
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