ペドロジスト
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高知県下の農耕地土壌の新しい区分方法
河津 日和佐大田 郁夫櫻井 克年
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1998 年 42 巻 2 号 p. 97-106

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抄録

高知県内の農耕地とその周辺の林地を対象に,従来の土壌理化学性の分析値に新たな指標値(荷電ゼロ点・σ_p,酸化物含量)を用いて,土壌区分を行った。また,土壌母材や水溶性画分の分析値のみを用いた土壌区分も試みた。これらの結果から,現在の多様化した土地利用形態の現状を評価するためにどのような方法が適しているか検討した。a)従来の一般理化学性の分析値のみを用いて行った土壌区分(因子:8)は,土壌管理・施肥管理により容易に変わる性質によって区分されるため,農耕地(造成地・既成畑・転換畑)の特徴(土地利用形態・土壌母材等)を反映した区分とはならなかった。b)一般理化学性に土壌管理・施肥管理により変わりにくい性質として,新たな指標値(ZPC, σ_p, Fed, Alo)を加えて12因子で行った土壌区分は,農耕地の特徴を反映した明確な区分が可能であった。c)母材の構成成分をもとにした土壌区分(因子:10)は,母材の種類と風化度により大きく区分された。しかし,農耕地土壌を中心とした土壌試料であるため,下層に持ち込まれた養分は無視できない要因となった。d)水溶性画分を用いた土壌区分(水溶性カチオン・アニオン,低分子有機酸:15因子)は,これらの量に基づく区分となり,現在の土壌管理のみが反映される結果となった。以上のことから,適切な変数を選択することによって目的にかなった土壌分類が可能であることがわかった。中でも,12変数を用いたb)の分類方法は,様々な土地利用履歴を持つ土壌の区分が可能であり,土地管理や土壌保全の目的に適した中期的な視点からの分類方法であることがわかった。

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© 1998 日本ペドロジー学会
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