ペドロジスト
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中国東北部,吉林省に分布する土壌の腐植酸の特徴
代 静玉米林 甲陽
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1999 年 43 巻 2 号 p. 88-97

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抄録

中国吉林省の中西部に分布する5種類の土壌(湿草地性黒色土,典型黒色土,レシベ,淡色チェルノーゼム,ステップ性アルカリ土)から抽出した腐植酸について1%吸光係数(E_<600>値),元素組成,官能基組成,XAD樹脂で分画される成分組成,^1H-NMRによる各種形態水素の組成を検討した。日本の土壌腐植酸と比較した結果は以下のように要約される。1)本地域土壌の有機炭素量はいずれも18g kg^<-1>以下と低いが,本地域中では黒色土で多く,アルカリ土で非常に少ない。アルカリ土は土壌pHが高いため腐植物質が溶脱しており,残存する腐植物質の抽出割合も非常に低い。ピロリン酸を含むアルカリ溶液にも可溶化しにくい腐植物質が多く残存していると考えられた。2)土壌腐植酸のE_<600>値は,黒色土が最も高く,レシベ,淡色チェルノーゼム,アルカリ土の順に低下した。元素組成から計算されるH/C原子数比は同じ順で高い。黒色土のE_<600>値とH/C比は黒ボク土と同程度であり,他の土壌のE_<600>値は黒ボク土と褐色森林土の中間であった。3)黒色土,レシベ,淡色チェルノーゼム,アルカリ土の順に腐植酸のカルボキシル基量が減少し,アルコール性水酸基量が増加した。また,同じ順でカルボキシル性成分が減少し,脂肪族性成分が増加した。黒色土腐植酸の成分組成は黒ボク土腐植酸によく類似していた。本地域土壌のフェノール性成分はいずれも非常に少なく,これは亜寒帯土壌の特徴であると推察される。4)黒色土の腐植酸は芳香族プロトンが多く,芳香環からβ位以上の脂肪族プロトン数が少ないことから,黒ボク土と同程度に芳香環が発達し脂肪族側鎖が短いと推察された。また,黒色土,レシベ,淡色チェルノーゼム,アルカリ土の順に脂肪族側鎖の長さは長いと推察した。

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© 1999 日本ペドロジー学会
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