ペドロジスト
Online ISSN : 2189-7336
Print ISSN : 0031-4064
鳥取県の砂丘における土壌生成 : II 砂丘土壌中の粘土鉱物について
飯村 康二本名 俊正山本 定博岡崎 宏樹沖田 智川上 健太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 45 巻 2 号 p. 84-93

詳細
抄録

鳥取県の三大砂丘-鳥取砂丘,北条砂丘及び弓浜砂丘-の砂丘未熟土に含まれる粘土鉱物組成を研究した。土壌生成作用による腐植及び粘土の生成と粒子の細粒化が進行するクロマツ植生下の砂丘未熟土表層では,三砂丘に共通して,粘土フラクションのX線回折により,雲母粘土鉱物,緑泥石を主とし,バーミキュライト,カオリナイトと時にスメクタイト及びギブサイトを伴う粘土鉱物が認められた。示差熱分析結果も概ねこれと合致し,さらにギブサイトが多くの地点,層位に含まれることを示した。緑泥石は,植生下の表層土における弱酸性,低有機物含量及び乾・湿状態の交代という条件の下で,バーミキュライト及びスメクタイトへの層間水酸化物の集積によって生成するものと推定した。県東部の鳥取砂丘ではマツ林下の表層土に近似する組成の粘土鉱物が,マツ林の下層土,有機物の少ない畑地の表層及び下層土の,粒径組成中1%程度を占めるにすぎない粘土フラクションでも認められた。これらの土壌又は層位で観察される粘土鉱物は,砂丘砂を運ぶ千代川上流の若桜-大原地域に分布する,緑泥石を含む三郡変成岩由来の粘土の混入によると考えられた。県中部の北条砂丘では,マツ林下の下層土,畑地の表・下層土(粘土フラクションは0.3%前後)では少量の珪酸,酸化アルミニウム及び酸化鉄の外は結晶性粘土鉱物はX線回折では殆ど検出されず,砂を涵養する天神川上流に変成岩類が分布しないためと考えられた。県西部の弓浜砂丘富益北口のマツ林下の下層土では,鳥取砂丘より少ないが上記の結晶性粘土鉱物が検出された。クロスナ層からなる下大崎の畑地の表層土(粘土フラクションは2%前後)の粘土鉱物とともに,この砂丘を涵養する日野川上流の多里地域に,千代川上流地域より小面積であるが分布する,三郡変成岩に由来すると推定された。下大崎畑地の下層土では結晶性粘土鉱物は少なく,弓浜砂丘の砂を供給する母材の変動が大きいことが推定された。

著者関連情報
© 2001 日本ペドロジー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top