2009 年 53 巻 2 号 p. 66-76
高知県四万十町葛篭川流域のヒノキ人工林と近隣に存在する広葉樹林の土壌について,断面調査と理化学性の分析を行い,それらを比較した。ヒノキ人工林の土壌は,O層が欠如しており,断面上部に小型の礫が混入しているなど,侵食の影響を強く受けていることが示唆された。ヒノキ人工林の表層土壌の全炭素量,全窒素量,CECは,広葉樹林よりも低い値を示した。ヒノキ人工林の土壌は,広葉樹林に比べ,表層および次表層の粗孔隙率が高く,細孔隙率が低かった。また,細孔隙率と液相率との間には高い相関が確認された。土壌の物理性が林分間で異なる原因を明らかにするために,両林分の表層土壌から土壌薄片を作成し,偏光顕微鏡を用いて土壌微細形態を観察した。広葉樹林では土壌粒子が主にペッドを形成して存在していたのに対し,ヒノキ人工林では比較的ペッド量が少なく,ペッドと単粒子の両方によって微細構造が形成されていた。広葉樹林の軟粒状ペッドは微細孔隙を内部に持つ微小なペッドの集合体であったが,ヒノキ人工林の軟粒状ペッドは内部が緻密であり,微細な内部孔隙が少なかった。このようなペッドの量や性質の違いが,林分間の物理性が異なる原因であると考えられた。