ペドロジスト
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青海チベット高原の高山草甸土壌の特性,種類および分布様式
李 海珠浜崎 忠雄境 雅夫李 海林宋 仁徳長友 由隆
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2010 年 54 巻 1 号 p. 21-34

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抄録

高山草甸(Alpine meadow)は,青海チベット高原の最も生産力が高く,重要な草地であり,放牧可能草地のほぼ50%を占めている。高山草甸の主要な分布地である祁連山脈中の門源ヴァレーにおいて,高山草甸土壌の特性,種類および分布様式を調べた。扇状地の段丘面には普通ファエオゼム(石灰質,厚層腐植質,シルト質),普通カンビソル(石灰質,腐植質,シルト質)および普通スタグノソル(石灰質,シルト質),旧河道には普通フルビソル(石灰質,腐植質,表層礫質),そして流路州には普通フルビソル(石灰質,腐植質,下層礫質)およびモリックフルビソル(石灰質,腐植質,下層礫質)が発達していた。また,谷底平野の旧河道には普通フルビソル(石灰質,腐植質,下層礫質,シルト質),流路州には普通フルビソル(石灰質,腐植質,シルト質)およびグライ化フルビソル(石灰質,腐植質,シルト質)が発達していた。高山草甸土壌は,扇状地と谷底平野の微地形の違いに対応して世界土壌資源照合基準の少なくとも4つの照合土壌群とそれらの9つの細分タイプを含んでいた。青海チベット高原の高山草甸土壌は,表層礫質土壌を除き,放牧地土壌として理化学性にほとんど問題がなく,世界の無機質土壌の中で最も多く有機物を貯留した肥沃な土壌の一つである。しかし,多量に存在する細砂,シルトおよび腐植物質は風食を受け易く,草地の退化が起これば激しい侵食が起こる恐れがある。

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© 2010 日本ペドロジー学会
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