日本歯周病学会会誌
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原著
Lactobacillus salivarius TI2711 (LS1)の服用によるヒト歯肉縁下プラーク中の歯周病原菌抑制効果
松岡 隆史菅野 直之瀧川 智子高根 正敏吉沼 直人伊藤 公一古賀 泰裕
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2006 年 48 巻 4 号 p. 315-324

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抄録

乳酸菌Lactobacillus salivarius TI2711(LS1)が歯肉縁下プラーク中のPorphyromonas gingivalis菌数を減少させ,かつ臨床症状を改善した第1報の臨床試験の結果をふまえ,長期服用時のLS1の効果の持続性と服用中止後の菌数の変化を調べるために,試験期間,被験者を拡大した臨床試験を実施した。総数87名(開始時103名,途中脱落者16名)の被験者にLS1含有の錠菓 (1日当たりのLS1菌数2.0×108) またはプラセボ錠菓を1日3錠12週間服用させ,歯肉縁下プラークを採取して試料とした。試料中に含まれる歯周病原菌とL. salivariusの菌数はリアルタイムPCRで測定した。歯肉縁下プラーク採取時に,臨床所見としてPD,BOP及びPCRを記録した。その結果,12週間のLS1服用により,LS1服用群ではP. gingivalis菌数は平均で1.12×105から2.97×104へと有意(P<0.05)に減少し,服用中止すると菌数は増加した。逆にL. salivarius菌数はLS1を服用すると増加し,服用中止すると減少した。P. gingivalis L. salivariusの菌数の関係は逆相関の傾向があり,LS1が実際に歯肉縁下プラークに移行し,プラーク内のP. gingivalisを減少させているものと考えられた。臨床症状の改善はLS1服用群,プラセボ服用群の両者に見られた。従って12週間服用時においてもLS1はP. gingivalis菌数抑制効果を持ち,服用中止により服用前と同レベルに菌数が回復することが示された。本研究においてもLS1のプロバイオティクスとしての有用性が示された。

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© 2006 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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