日本歯周病学会会誌
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症例報告
非外科的治療によって安定した歯周状態が得られている
広汎型侵襲性歯周炎の一症例
松盛 恵美
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2011 年 53 巻 4 号 p. 263-271

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抄録

本報では広汎型侵襲性歯周炎の患者に対し, 歯周外科治療を行わずに, プラークコントロールを重視した歯周基本治療と短間隔のサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)によって歯周組織に著明な改善が得られた症例について報告する。
患者は27歳男性で, 全身疾患を有さず喫煙歴はない。22近心のう蝕とブラッシング時の歯肉出血を主訴に来院した。初診時の臨床所見は全顎的に歯間部と辺縁部の歯肉に発赤と腫脹を認め, エックス線所見では全顎的に中等度の水平性骨吸収と, 部分的に垂直性骨吸収を認めた。多量の歯肉縁下歯石の付着も見られた。歯周組織検査の結果, 4 mm以上のプロービングポケットデプス(PD)の割合は63.0%, プロービング時の出血(BOP)部位の割合は59.4%と非常に高かったが, その割にO'Learyのプラークコントロールレコード(PCR)は21.1%と比較的低かった。
歯周基本治療において患者教育を行うことにより, 患者は自分自身の口腔内に関心を持つようになった。また, 患者は, 歯周病に関する知識を得たことで歯周治療に対して積極的になったので, スムーズに歯周基本治療を進めることができた。しかし, 歯周外科治療は恐怖心から拒否したので, 非外科的治療で対応した。PD4 mm以上の歯周ポケットが残存する部位のデブライドメントに努め, ハイリスク部位に対しての, 徹底したセルフケアや1ヵ月毎のSPTを行うことで, 2年後PD4 mm以上の割合は21.9%, BOP部位の割合は9.4%になり, 歯周組織は改善して安定した歯周状態が得られている。
日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(4) : 263-271, 2011

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