2012 年 54 巻 1 号 p. 38-45
塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2:basic fibroblast growth factor)は,歯周組織再生誘導薬の有力なの一つと期待されており,動物実験および臨床治験によって,その有効性と安全性が明らかにされている。では,KCB-1D(歯周病を対象とした遺伝子組み換えヒト型 FGF-2 の治験薬コード)を用いた探索的第 II 臨床治験に参加した 79 名の被験者を対象として,フラップ手術時にプラセボ(0%)あるいは 0.03%,0.1%,.3%の何れか濃度の FGF-2 を投与した被験歯の長期経過を調査した。すなわち,診療録などの診療情報から,験最終観察日から本研究調査実施日までの間(約 8 年間)に,各種濃度の FGF-2 あるいはプラセボを投与歯に対して行なわれた治療や,被験歯に出現した症状の内容と年月日を調査した。そして,これらの,治験薬投与部位における歯周炎の悪化に起因すると判定された治療や症状をイベント,それ以外を打ち切,生存時間解析を行った。その結果,発生した全イベントは 14 例で,生存時間解析の結果,0.3%投与群はフラップ手術を単独で施行したプラセボ群に比べてイベント発生までの期間の有意な延長が認一般化 Wilcoxon 検定:p=0.0345)。また,本研究の観察期間を含めて FGF-2 投与の安全性に関する日本歯周病学会会誌(日歯周誌) 54(1):38−45,2012