抄録
プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング(Professional Mechanical Tooth Cleaning:PMTC)用器具として,エアスケーラー接続型ナイロン製ブラシ(以後,ナイロンブラシ)の有用性が報告され,臨床使用頻度も増加している。一方,口腔内環境においては,歯頸部における硬組織疾患に対して,光重合型コンポジットレジン(以後,コンポジット)を用いて修復される症例も多い。そのため,このナイロンブラシの使用がコンポジット表面に対して影響を及ぼす可能性も考えられる。そこで,ナイロンブラシによる PMTC が異なる種類のコンポジット表面に及ぼす影響について,PMTC 後の表面粗さ(Ra)測定および走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope : SEM)を行うことによって検討した。その結果,コンポジットの種類および PMTC の手法の違いは,表面粗さに対して影響を及ぼす因子であることが判明した。PMTC の手法として回転式器具および超音波スケーラーを用いた際のコンポジットの表面粗さは,有意に増加したものの,ナイロンブラシを用いた条件では有意差が認められなかった。そのため,PMTC の手法としてナイロンブラシの使用は,コンポジットの表面性状に影響を及ぼすことなく,その臨床的安全性が示された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(3):257-264, 2012