2013 年 55 巻 1 号 p. 24-36
生きた細胞を用いる組織工学が,組織や臓器移植に代わる手法として浮上してきている。本研究の目的は,移植片として使用できる厚みを持つ細胞シートの作製,および作製期間の短縮化である。ヒト歯槽骨骨膜由来細胞(HABPCs)を 24 穴の温度応答性培養器材へ初日と 7,11 日後に同じウェル上に 3.6×104cells/ml の濃度で播種した。初回の播種より 14 日後,他のウェルから回収した 15 枚の細胞シートを一箇所の細胞シート上に積層し,HABPC 積層細胞シートを作製した。HABPC 積層細胞シートを 1,3,5 日培養し,組織学的,免疫組織化学的に観察した。alkaline phosphatase 染色およびⅠ型コラーゲン,オステオポンチン,オステオカルシン,runt-related transcription factor 2 による免疫染色より,経時的にシート表層から HABPCs の分化が促進されたと考えられ,3 日目から 5 日目にかけて骨形成能が上昇したことが示唆された。von Kossa 染色では 3 日目より石灰化様組織の形成が認められた。本研究において,温度応答性培養器材を使用し,初期細胞播種濃度を増やすことにより,作製期間の短縮化が可能となった。さらに,移植片として単独で使用できる十分な厚みを持ったHABPC 積層細胞シートの作製方法が示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)55(1):24-36,2013