日本歯周病学会会誌
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日本歯周病学会会員の喫煙に関する質問票調査
稲垣 幸司王 宝禮埴岡 隆藤井 健男両角 俊哉伊藤 弘山本 龍生森田 学
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2015 年 57 巻 2 号 p. 100-106

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要旨

日本歯周病学会会員の喫煙状況を把握するために層化無作為抽出による質問票調査を行った。対象は,631名(男性62.4%,回収率:42.1%)で,30-39歳が最も多く30.3%を占めた。職種の内訳は,歯科医師75.4%,歯科衛生士22.5%,歯科技工士0.2%,学生0.3%,その他1.6%であった。所属別では,大学・大学院・短大15.2%,附属病院・関連病院8.1%,開業歯科医院71.6%,その他5.1%で,学会資格でみると,指導医4.9%,専門医13.0%,認定医8.6%,認定歯科衛生士13.2%,一般会員60.4%であった。勤務先の脱タバコ対策は,敷地内禁煙48.2%,建物内禁煙34.9%,一方,家族・同居者に喫煙者がいるものが30.7%となった。喫煙歴は,非喫煙者376名(59.6%),前喫煙者211名(33.4%),喫煙者44名(7.0%)で,職種別喫煙率は,歯科医師8.4%,歯科衛生士2.1%で,歯科医師が有意に高かった(P<0.05)。資格の有無別喫煙率は,指導医,専門医,認定医7.8%,一般会員8.7%となった。喫煙者の年齢層別喫煙率は,20-29歳3.1%,30-39歳8.9%,40-49歳6.9%,50-59歳6.2%,60-69歳8.0%で,30-39歳が最も高かった。なお,喫煙者の70.5%が禁煙を試みていたが,81.8%が関心期であった。本調査結果が,日本歯周病学会会員の歯周病治療における禁煙支援を積極的に推進していくことに活かされていくことが望まれる。

緒言

2013年国民健康・栄養調査1)によると,日本人の喫煙率は19.3%で,2010年19.5%と,はじめて20%をきったが,その後,2011年20.1%,2012年20.7%と低下傾向が20%あたりで停滞した状態である。男女別では,成人男性の喫煙率は32.2%で,30歳代の44.0%を最大として,50歳代,40歳代と続いている。一方,成人女性の喫煙率は,2008年9.1%と,はじめて10%をきり,その後,2009年10.9%となったが,2010年8.4%,2011年9.7%,2012年9.0%と10%前後からやや低下して8.2%となり,20歳代の12.7%を最大として40歳代,30歳代と続いている。

日本医師会が4年毎に行っている医師の喫煙率調査2)では,2000年時点では高い喫煙率(男性27.1%,女性6.8%)であったが,2012年には,男性12.5%,女性2.9%と低下し,男女ともに国民の平均喫煙率の半分以下である。一方,歯科医師の喫煙率に関しては,日本歯科医師会では把握されておらず3),検索する限りでは,兵庫県歯科医師会会員(2003年)28.9%4),日本口腔外科学会会員(2007年)10.5%5),歯科医師喫煙率(2008年)27.1%6)と報告されているくらいである。

そこで,日本歯周病学会では,まず,日本歯周病学会の指導的立場にある評議員を対象とした喫煙状況と歯周組織に与える喫煙の影響についての質問票調査7)を,次に,歯周病専門医を対象に,歯周病のリスクファクターとしての喫煙と糖尿病に関する質問票調査8)を行ってきた。なお,同喫煙率は,評議員13.1%,歯周病専門医14.7%であった。そのような経過を受け,本研究では,日本歯周病学会会員を対象に喫煙状況や勤務先の喫煙対策,患者や歯科医師の喫煙に対する見解等についての質問票調査を行った。

対象および方法

2013年10月時の日本歯周病学会会員9,087名から層化無作為抽出(職種・年齢層別)した1,500名(16.5%)に対して,健康サポート委員会で事前に作成し日本歯周病学会常任理事会で承認を得た質問票を2013年11月中旬に郵送し,開封後1週間以内の投函を依頼し,12月末までの回答を受け付けた。

調査項目は以下のとおりである(表1)。すなわち,性別,年齢層,職種,学会資格,所属,現在の喫煙状況(喫煙者には,禁煙歴,喫煙ステージ,5年後の喫煙状況の予測),家族や同居者の喫煙状況,勤務先の喫煙対策,患者や歯科医師の喫煙に対する見解,ニコチン依存症や禁煙支援の方法の認知,医科での保険収載(ニコチン依存管理料)の認識,ニコチン依存管理料の施設条件の知識,ニコチン依存管理料の歯科での適用,歯科における禁煙支援の特徴(歯科では歯肉の色の変化などを示すことにより禁煙指導を行いやすいと思うか,歯科では歯周基本治療やSPT来院時に継続した禁煙支援を行いやすいと思うか),歯周病専門医の資格要件に非喫煙を制度化することに対する考え,加濃式社会的ニコチン依存度(Kano test for social nicotine dependence),臨床医に対する質問(患者の喫煙状況の把握状況と時期,重度歯周病患者の喫煙者の割合についての感覚的認識,喫煙者の歯周治療への反応についての感覚的認識,禁煙支援実施状況,患者に禁煙支援を行わない理由である。その中で,本報告では,第1報として,性別,年齢層,職種,学会資格,所属,現在の喫煙状況(喫煙者には,禁煙歴,喫煙ステージ),家族や同居者の喫煙状況,勤務先の喫煙対策についてまとめた。

統計解析は,PASW Statics 18 for Windowsを用い,職種別の喫煙率の比較についてχ2独立性の検定またはFisherの直接確率計算法を行い,有意水準5%未満を有意差ありと判定した。

なお,本研究は,日本歯周病学会倫理委員会(承認番号第JSP2013001号,承認日2013年8月19日)の承認を得て行った。

表1 調査項目

結果

回答の寄せられた日本歯周病学会会員658名(回収率43.9%)の質問票中,同意書のある631名(42.1%)の結果を以下に示した(表2, 3)。なお,回収率は,歯科医師42.2%,歯科衛生士47.3%,その他49.7%であった。

1.性別は,男性394名 (62.4%),女性235名 (37.2%),未記入2名(0.3%)であった(表2)。

2.年齢構成は,20-29歳65名(10.3%),30-39歳191名(30.3%),40-49歳173名(27.4%),50-59歳146名(23.1%),60-69歳50名(7.9%),70歳以上6名(1.0%)で,30-39歳が最も多かった(表2)。

3.職種は,歯科医師476名(75.4%),歯科衛生士142名(22.5%,内1名男性),歯科技工士1名(0.2%),学生2名(0.3%),その他10名(1.6%)であった。なお,その他は,会社員2名,企業研究員2名,教員2名,無職1名,名誉教授1名,歯科助手1名,未記入1名であった(表2)。

4.本学会の資格は,指導医31名(4.9%),専門医82名(13.0%),認定医54名(8.6%),認定歯科衛生士83名(13.2%),一般会員381名(60.4%)であった(表2)。

5.所属は,大学・大学院・短大96名(15.2%),附属病院・関連病院51名(8.1%),開業歯科医院452名(71.6%),その他32名(5.1%)であった(表2)。

6.喫煙状況は,一度も吸ったことがない者(喫煙未経験者)263名(41.7%),試しに吸ってすぐやめた者(試し喫煙者)113名(17.9%),すなわち,非喫煙者376名(59.6%)で,吸っていたがやめた者(前喫煙者)211名(33.4%),吸っている者(喫煙者)44名(7.0%)であった。なお,男性歯科衛生士1名は,30-39歳,開業歯科医院勤務で,喫煙未経験者,歯科技工士1名は,50-59歳,開業歯科医院勤務で,前喫煙者,学生の1名女性,30-39歳,喫煙未経験者,1名男性,20-29歳,前喫煙者であった(表3)。

7.勤務先(歯科医院,大学,病院など)の喫煙対策は,敷地内禁煙304名(48.2%),建物内禁煙220名(34.9%),屋内に所定の喫煙場所があると回答した者64名(10.1%),特に制限はなくどこでも喫煙可能と回答した者4名(0.6%),知らないと回答した者10名(1.6%),その他と回答した者17名(2.7%)であった(表3)。

8.家族・同居者の喫煙(受動喫煙)状況は,喫煙者あり194名(30.7%),喫煙者なし429名(68.0%),不明3名(0.5%),未記入5名(0.8%)であった(表3)。

9.喫煙者44名の1日喫煙本数は,10本16名,15本5名,20本9名,40本1名で,1日あたりの平均喫煙本数と喫煙年数をかけあわせたブリンクマン指数275.5±267.0(9~1,600,n=40)であった(表3)。

10.喫煙者44名の性別とその喫煙率は,男性40名(10.2%),女性4名(1.7%)であった(表3)。

11.喫煙者の年齢層別喫煙率は,20-29歳2名(3.1%),30-39歳17名(8.9%),40-49歳12名(6.9%),50-59歳9名(6.2%),60-69歳4名(8.0%)で,30-39歳が最も高かった(表3)。

12.喫煙者44名の職種は,歯科医師40名(90.9%),歯科衛生士3名(6.8%),その他1名(2.3%)で,職種別の喫煙率は,歯科医師8.4%,歯科衛生士2.1%で,歯科医師が高かった(P<0.05)(表3)。

13.喫煙者44名の学会資格は,指導医1名(2.3%),専門医7名(15.9%),認定医5名(11.4%),認定歯科衛生士1名(2.3%),一般会員30名(68.4%)であった。一方,指導医,専門医,認定医合計167名中の喫煙者(喫煙率)は,13名(7.8%),一般会員309名中の喫煙者は27名(8.7%)であった。また,喫煙者44名の所属とその喫煙率は,大学・大学院・短大4名(4.2%),附属病院・関連病院1名(2.0%),開業歯科医院36名(8.0%),その他3名(9.4%)であった(表3)。

14.喫煙者44名の禁煙経験は,禁煙を1度もしたことがない者(禁煙未経験者)12名(27.3%),禁煙をしたことがある者(禁煙経験者)31名(70.5%),未記入1名(2.3%)であった(表3)。

15.喫煙者44名の喫煙ステージは,全く関心がない無関心期6名(13.6%),関心はあるが,今後6か月以内に禁煙しようとは思わない前熟考期22名(50.0%),6か月以内に禁煙しようと考えているが,1か月以内には禁煙する予定がない熟考期14名(31.8%),この1か月以内に禁煙する予定の準備期1名(2.3%),未記入1名(2.3%)であった(表3)。

表2 対象者の構成
表3 喫煙,受動喫煙状況および勤務先の脱タバコ環境

考察

日本歯周病学会会員631名の喫煙率は,7.0%(男性10.2%,女性1.7%)で,職種別では,歯科医師8.4%,歯科衛生士2.1%,年齢階層別では,20-29歳4.5%,30-39歳38.6%,40-49歳27.3%,50-59歳20.5%,60-69歳9.1%で,30-39歳が最も高かった。一方,2013年国民健康栄養調査1)では,日本人の喫煙率は,19.3%(男性32.2%,女性8.2%)で,男性30歳代44.0%,女性20歳代12.7%で最大となっている。同調査1)と比較すると,日本歯周病学会会員の喫煙率は,一般的な喫煙率の1/3以下である。

本調査結果は,2012年の医師の喫煙率(男性12.5%,女性2.9%)2)や,いままでの歯科医師の喫煙率,兵庫県歯科医師会会員(2003年)28.9%4),日本口腔外科学会会員(2007年)10.5%5),歯科医師喫煙率(2008年)27.1%6)よりも低い結果となった。また,日本歯周病学会の評議員(2005年)や歯周病専門医(2007年)の喫煙率13.1%8),14.7%9)に比べ,低い結果となった。

男性医師の診療科別喫煙率(2012年)では,呼吸器科が6.7%と最低で,次に低かったのは皮膚科の7.8%,最も高かったのは泌尿器科の17.9%で,精神科の17.7%が続いていた2)。一方,学会別喫煙率では,日本口腔外科学会会員(2007年)10.5%5),日本循環器学会会員(2005年)7.1%9),日本呼吸器学会会員(2005年)13.9%10)であり,年度が異なるが,日本歯周病学会会員7.0%は低い結果である。また,歯科衛生士の喫煙率に関する大規模な調査結果は検索する限りではみられないが,歯科病院に勤務する歯科衛生士22名の調査結果11)と比べると,その喫煙率は9.1%とあり,本調査では2.1%であることから,低い結果となった。一方,歯学部附属病院に勤務する歯科衛生士40名の調査では,喫煙者はいないという報告12)もあり,今後,より大規模な調査が必要である。

一方,喫煙者の禁煙の意思に関して,2013年国民健康栄養調査1)では,タバコをやめたいと思う者の割合は24.6%であった。これに対して,本調査の喫煙者の禁煙経験は70.5%であり,多くが禁煙を試み,喫煙者の喫煙ステージは,無関心期13.6%,関心期81.8%,準備期2.3%,未記入2.3%であった。

日本歯周病学会会員の30.7%が,家族・同居者による受動喫煙を受けていた。2013年国民健康・栄養調査1)では,2008年と比べると,受動喫煙の割合は減少してきており,家庭内は9.3%と本調査結果と比べて低い。しかし,飲食店,遊技場,職場,路上における受動喫煙の割合は,それぞれ,46.8%,35.8%,33.1%,33.1%と3割を超えており,依然として高い状況にある1)。したがって,このような事態の改善のため,日本歯周病学会会員はもちろんであるが,歯科医療に従事するものすべてが,歯科医療現場における禁煙支援,喫煙だけではなく,受動喫煙のリスクも含めた啓発を積極的に行なっていくことが大切である。

本調査(2013年)での勤務先の喫煙対策は,敷地内禁煙48.2%,建物内禁煙34.9%であった。この結果は,歯周病専門医(2007年)調査時の敷地内禁煙43.4%8)に比べ,高かった。一方,医療機関の敷地内禁煙率は,古くは日本循環器学会認定研修施設(2005年)24.0%9),日本呼吸器学会所属医療機関(2003年)28.0%10)であったが,その後徐々に増加し,医学部(2012年)55.0%,医学部附属病院(2012年)77.5%13),また,歯学部(2009年)31.0%,歯学部附属病院(2009年)58.6%13)となっている。歯科医院,大学,病院などからなる日本歯周病学会会員施設の敷地内禁煙率48.2%は,医学部や医学部附属病院に比べ低く,今後,早期に増えていくことが望まれる現状である。

日本歯周病学会会員の喫煙状況や家族や同居者の喫煙状況,勤務先の喫煙対策などを把握するために層化無作為抽出による質問票調査を行った。その結果,会員の喫煙率はおよそ7%(男性10%,女性2%)で,前述の国民健康栄養調査1)や従来の歯科医師喫煙率よりは低く,医科の分野で低い呼吸器科や皮膚科の男性医師とほぼ同じレベルにあった。しかし,家族・同居者による受動喫煙は31%と,前述の国民健康栄養調査1)に比べ高く,勤務先の敷地内禁煙率48%も,医学部や医学部附属病院に比べ低い現状であった。本調査により,日本歯周病学会会員の喫煙に関する現状の一端を把握することができた。本調査結果が,日本歯周病学会会員の歯周病治療における禁煙支援を積極的に推進していくことに活かされていくことが望まれる。

謝辞

稿を終えるにあたり,本質問票調査にご協力いただいた日本歯周病学会会員の皆様,資料の整理にご協力いただいた愛知学院大学歯学部歯周病学講座近藤陽介先生,ご指導いただいた同歯周病学講座三谷章雄先生に深く御礼申し上げます。なお,本研究は,文部科学省科学研究費補助金(基盤研究C課題番号25463267)の補助によって行った。

References
 
© 2015 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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