日本歯周病学会会誌
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ミニレビュー
最新の歯周外科用ディスポーザブルメス事情
澁谷 俊昭
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2018 年 60 巻 1 号 p. 1-3

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メス,またはランセットは,手術,解剖学的解剖に使用される小さくてきわめて鋭利な刃物です。メスは一回限りの使い捨てまたは再使用の可能なものがあります。再利用可能なメスには,鋭く刃をつけることができる恒久的に取り付けられたブレードや取り外し可能な使い捨てブレードがあります。カークランドのメスやオルバンナイフなどです。使い捨てのメスは,通常,伸縮可能なブレード(ユーティリティナイフのような)を備えたプラスチックのハンドルを有し,一度使用され,その後,器具全体が廃棄されるものがあります。通常メスの刃は滅菌パックに個々に詰められます。

スカルペルブレードは,通常,焼き入れされた焼き入れ鋼,ステンレス鋼,または高炭素鋼でできています。さらに,チタン,セラミック,ダイヤモンドのナイフもあります。例えば,MRIガイダンスの下で手術を行う場合,スチールブレードは使用できません(ブレードがマグネットに引き込まれるか,画像アーチファクトを引き起こす可能性があります)。

歴史的には,外科用メスはブレードとハンドルの2つの部分で構成されています。ハンドルはしばしば再利用可能であり,ブレードは交換可能です。近年の医療用では各ブレードは1回のみ使用されます(小さな手術の場合でも)。

ハンドルはBard-Parker Companyの創設者Charles Russell BardとMorgan Parkerにちなんで命名された“B.P. handle”として知られています。モルガン・パーカーは1915年に2ピース・メス・デザインの特許を取得し,Bard-Parkerは以前使用されていた加熱方法と同様にブレードを鈍らせることのない低温滅菌方法を開発しました。医療用メスのハンドルには2つの基本的な種類があります。最初のハンドルは#3と#4ハンドルで使用されるフラットハンドルです。#7ハンドルは,長い書き込みペンのようなもので,正面が丸く,後ろがフラットです。#4ハンドルは#3より大きい形態をしています。ブレードは対応するフィッティングサイズで製造され,1つのサイズのハンドルにのみ適合します。スカルペルブレードは,窒化ジルコニウムでコーティングされたエッジを備えています。外科手術のメスの代替手段には,電気焼灼器およびレーザーがあります。

替え刃メスは価格が下がるにつれて,また針刺し防止法などの法律のためにますます人気が高まっています。様々なメーカーが提供する使い捨て安全メスは本質的に2種類あります。それらは引込み式ブレードまたは引込み式シースタイプのいずれかに分類できます。OX Med Tech,DeRoyal,Jai Surgicals,Swann Morton,PenBladeなどの企業が作成した開閉式ブレードは,標準的なボックスカッターと類似しているため使いやすいです。リトラクタブルシースバージョンは,医師にとっては良好な人間工学的感覚を持ち,Aditya Dispomed,Aspen Surgical,Southmedicなどの企業によって作られています。いくつかの企業が再利用可能な金属製ハンドルを備えた安全メスを提供し始めました。このようなモデルではブレードは通常カートリッジ内で保護されます。そのようなシステムは通常カスタムハンドルを必要としブレードおよびカートリッジの価格は従来の手術用ブレードよりもかなり高額となります。

安全性からメスはアクティブデバイスであるため,再使用可能なメスより替え刃メスのほうが4倍多くのアクシデントがあることを示した研究があります。

ブレード・リムーバーは指または鉗子で危険に晒すことなくハンドルからブレードを安全に取り外すことができるさまざまなメスブレード除去器具があります。医療分野では片手状のメス刃除去器具は一体型メスよりも最大5倍も安全であるとの報告もあります。

ハンズフリー技術と組み合わせた替え刃メスおよび片手刃除去器具の両方の使用は,メスによる外傷を減少させる上で有効です。より安全でより効果的なメス安全対策を検討し使用することは医療者の責任です。

現在,本邦で歯周外科手術に一般的に用いられるのが替え刃メスです。その種類は#11,#12,#15が一般的です。主な製造社はフェザー安全剃刀(関市,岐阜)及び貝印株式会社(関市,岐阜)です。

今回,歯周外科手術に特化した新たな替え刃メスを紹介します。朝日大学歯学部とフェザー安全剃刀は産学共同研究の一貫として歯周外科用ディスポーザブルメスの開発を行っています。

歯周外科手術では多様な歯肉形態や歯根形態に対応するメスの形態が望まれています。近年,ルーペや顕微鏡下でのマイクロサージェリーが盛んに行われており,微細な切開が求められています。現在,マイクロサージェリーに用いられているメスはディスポーザブルではないものが主流で,価格も高いことが一般的です。今回,衛生面,安全面,経済性を検討して新規開発された替え刃メスの歯周外科手術での有用性を検討しました。新規開発した円形替刃メス(#370)(図1)の有用性を臨床研修医に豚顎に対する歯肉弁根側移動術に歯肉部分層弁作成に使用させ,その有効性を検討しました。コントロールには汎用されている#15の替刃メスを用いた群としました。その結果,新規開発した円形替刃メスを使用した群では歯肉部分層弁形成の成功率が優位に高い結果でした。新規開発した円形替刃メスは歯周形成外科における非熟練歯科医の成功率を向上させ可能性が示唆されました。

その他にも新規開発された替え刃メスを紹介します。No. 390(図2-a, 2-b)No. 390C(図3-a, 3-b, 3-c)いずれも両刃でブレード部分が短く目的の歯肉以外を損傷することが少ない設計となっています。また頚部を10度程度なら屈曲することが可能なため臼歯の豊隆に適応することが可能です。

以上のように歯周外科手術用の替え刃メスも進化し,より確実で安全な歯周外科が期待できることと考えます。

図1

円形替刃メス(#370)

図2-a

No. 390

図2-b

No. 390,屈曲後

図3-a

No. 390C

図3-b

No. 390C 屈曲方法

図3-c

No. 390,屈曲後

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
  • 1)   Takei  H,  Crranza  F,  Lecovic  V: The Periodontal Flap. In:  Crranza  F ed, Glickman's Clinical Periodontology, 7th ed, WB Saunders, Philadelphia, Pennnsylvania, 1990, 792-810.
  • 2)   南  昌宏: 繊細さを要求される外科に有効なメス「フェザー替刃メスNO.390」. the Qintessence, 132: 208, 2013.
  • 3)   北後 光信,  安田 忠司,  金山 圭一,  木村 洋子,  竹内 浩子,  向井 景祐,  水野 真央,  松村  侑,  森永 啓嗣,  濱  拓弥,  澁谷 俊昭: 歯周外科手術用に新規開発した円形替刃メスの有効性. 岐歯学誌, 44: 81-82, 2017.
 
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