2020 年 62 巻 4 号 p. 183-192
歯周炎は,歯周病原細菌の侵襲に対して宿主免疫応答が起こることで宿主―細菌相互作用が成立し,歯周組織が破壊される感染症である。種々ある歯周病原細菌のなかでも,Porphyromonas gingivalis(Pg)は,線毛や莢膜,gingipainといった酵素類,またindoleやdimethyl sulfideなどの細胞傷害物質をビルレンス因子として保持しており,歯周炎の主な原因菌として知られている1)。歯周病原細菌の中でも,特にPgは多くの臓器(脳,肺・気管支,肝臓,血管(動脈瘤,動脈硬化病変部),胎盤,冠状動脈)における感染が報告されている2)。また,Pgに対する血清IgG抗体価が高くなっている疾患としては,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA),アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD),糖尿病,慢性腎臓病などがある3)。歯周炎に関連する様々な疾患の動物モデルでPgのみの感染によって疾患の誘導,増悪が可能であるという報告がある。それらの疾患は,RA,AD,糖尿病,早産/低体重出産,NASH(非アルコール性脂肪肝炎)があり,そして腸内細菌叢の変化にも影響する4,5)。
日常的な菌血症が生じている歯周炎局所では,細菌だけでなく,細菌構築成分/細菌産生物(lipopolysaccharide(LPS),外膜タンパク(OMP),gingipain,シトルリン変換酵素(peptidylarginine deiminase:PAD)),また炎症に関連する様々な生物学的活性物質((interleukin:IL)-1β,IL-6,TNF-α,シトルリン化ペプチド(CP),抗シトルリン化ペプチド抗体(anti-citrullinated peptide antibody:ACPA),C5a,マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase:MMP),IL-17,活性化MΦが血流に乗って全身に拡がっていくと考えられている2,3)。
近年,歯周炎は様々な全身疾患との関連が報告されている6)。たとえば,恒常的にtumor necrosis factor-α(TNF-α)の産生性を増加させ,インスリン抵抗性を介して糖尿病の病態を増悪させる7)。歯周炎患者では歯周病原細菌由来成分が,また重度の肥満患者においては遊離脂肪酸が脂肪組織中のマクロファージに作用した結果,monocyte chemotactic protein-1(MCP-1)やIL-6などの炎症性サイトカインが大量に産生され,CRP値が上昇することで肥満が増悪するといわれている8)。また,Pgは血管内皮細胞に侵入する能力があり,動脈硬化病変からPgの遺伝子が検出されている。更にPgの病原因子の1つであるGroELは,血管内皮細胞に発現する熱ショックタンパク60(Heat-shock protein60:HSP60)と相同性があり,PgGroELに特異的なT細胞が動脈瘤組織に浸潤していることが報告されており,動脈硬化との関連がうかがえる9)。その結果,アテローム性動脈硬化とともに,心筋梗塞の誘因の一つになると考えられる10)。加えて,ADで死亡した患者の剖検脳組織において,Pgが高頻度に検出されており,歯周病原細菌に対する宿主の免疫応答により生じるTNF-αをはじめとした炎症性サイトカインが,血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を傷害し,毒素や菌が脳実質に移行している可能性がある11,12)。さらに,高齢者肺炎の大部分を占める誤嚥性肺炎は,不十分な口腔衛生管理で増加した口腔細菌の誤嚥によって発症し,肺炎病巣から歯周病原細菌が多く検出される8)。このように歯周炎は歯周病原細菌そのものに加えて,歯周病原細菌に対する宿主免疫応答が,多岐にわたる全身疾患の悪化や発症に関与している。
RAは,関節局所において組織破壊を引き起こす慢性の炎症性疾患で,関節の腫脹や疼痛が主症状である。日本での罹患率は約0.5%と推定され,性差は1:4で,30~50歳代の女性に好発する。また,RAはCPの増加と,これに対するACPAのような自己抗体に関連した自己免疫疾患である。RAの発症や増悪の背景には,いくつかの疾患感受性遺伝子と,性差,喫煙,歯周炎などの環境因子が複雑に関連している。疾患感受性遺伝子としては内因性シトルリン変換酵素をコードするPADI4の遺伝子多型や,shared epitope(SE)仮説で古くから知られているヒト白血球型抗原(human leukocyte antigen:HLA)をコードするHLA-DR1の遺伝子多型,更にSLLC22A3(solute carrier family 22 member 3)やRUNX1(runt-related transcription factor 1)などが報告されている13-15)。Klareskogはこれらの遺伝的素因や歯周炎,喫煙のような環境因子により関節外でのCPが増加し(first hit),これに対してACPA増加,関節内のCP増加(second hit)がRAを引き起こすというtwo-hit theoryを提唱した16)。
近年の疫学研究から,歯周炎はRAの発症や病態悪化のリスクとなることが報告されている17,18)。また,RAに罹患することで歯周炎を発症しやすく,RAと歯周炎は双方向性の因果関係にあることも示唆されている19)。RAは,中年以降に好発し,慢性の経過をたどりながら,炎症性サイトカインや破骨細胞に関連して骨や骨周囲組織の破壊をきたす疾患という点で,歯周炎と類似の病態を示す19)。RAが歯周病を増悪する因子として,骨粗鬆症併発による影響,ステロイド内服による易感染性,手指の機能不全による口腔衛生状態悪化などが考えられる19)。一方歯周炎は,慢性炎症により産生されたサイトカイン,活性化された内因性のPADやPg由来のPgPADが,歯周組織でCPを産生し,それに引き続いてACPA産生が亢進し,RA増悪に関与していると考えられる20-22)。更に近年,細菌感染などの刺激に活性化した好中球が,DNAと細胞質内の様々な殺菌タンパクを含んだ好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)と呼ばれる網状構造を細胞外に放出して細胞死に至る,NETosisの関与も示唆されている23)。NETosisに至る過程で好中球のPADI4によるヒストンのシトルリン化は必須であり,産生されたCPがACPA産生に関与している可能性がある24)。さらに,PgはPAD以外にも種々のビルレンス因子を有しており,他の因子がRA増悪に関与している可能性もある。Pgの産生するArg-gingipainは,補体因子C5aの生成を介して補体経路の一部を調整し,免疫反応を制御することが報告されている25)。補体は宿主の防御機構において重要な働きをしており,炎症細胞の遊走や活性化,細菌のオプソニン化や貪食・融解能を活性化する作用がある。また近年では,補体がtoll-like receptor(TLR)のような他の自然免疫系の調節にも関わるとされている26)。一方で補体の過度の活性化や調整機構の破綻が炎症を増強し組織破壊に関わる可能性がある27)。補体経路の活性化には古典経路,レクチン経路,第二経路の3つの経路があるが,いずれの経路においてもC3転換酵素が活性化して下流のエフェクター分子が誘導される28)。その中でも補体因子C5aは炎症反応を誘起する能力が高く,1モル当りの能力はC3aの約100倍と報告されている29)。C5aが関連する疾患には全身性エリテマトーデス,加齢性黄斑変形症など多くの疾患が報告されており,歯周炎とRA両疾患もC5aの関与が強く示唆されている30)。
歯周炎患者の歯周組織の炎症活動と局所の補体との間には関連があると言われている28)。PgのArg-gingipainはC5から活性化C5aを生成することが報告されている25)。また,RA患者では滑液中のC5a濃度が高い31)。動物モデルにおいては,C5aレセプター欠損マウスは歯槽骨吸収や関節破壊が抑制されることが報告されている32,33)。したがって,Pg感染はC5a産生を介してRA増悪に関与していることが示唆される。本研究では,Pg感染がRAを増悪させるメカニズムとして,補体因子C5aの関与に着目して検討を行った。
Pg感染とRAの関係を説明するメカニズムを明らかにするためには,in vitroだけではなくin vivoからも研究する必要がある。近年,全身的な免疫応答の結果,関節炎を自然発症するRAモデルとしてSKGマウスが確立された34)。SKGマウスは,T細胞シグナル伝達分子であるzeta-chain-associated protein kinase 70(ZAP-70)の点突然変異によって,RAと免疫組織学的に酷似した関節炎を自然発症する34)。また,細菌や真菌の壁構成成分であるラミナリン(laminarin:LA)のようなβ-glucanを投与して自然免疫系を活性化させることで関節炎を誘導できる35)。当研究室では,SKGマウスにPgを腹腔内投与することで関節炎が増悪することを報告した36)。しかし,Pgが口腔細菌であることを考慮したとき,よりヒトの病態に近いPg口腔投与モデルが関節炎増悪メカニズムを解析するに適していると考えた。関節炎モデルマウスであるSKGマウスの腹腔内にLAを投与し,また口腔からPgを感染させ,歯周炎や関節炎,全身的な影響について検討した。
関節炎の評価として,関節腫脹の評価は,坂口らのarthritis scoreに準じて,腫脹がみられない関節を0,指関節の腫脹を0.1,手首または足首の関節の軽度な腫脹を0.5,手首または足首の関節の重度な腫脹を1.0として,手足の各関節についてそれぞれ評価した34)。また,関節組織のHE染色,microCTによる解析,関節組織,血清中のIL-6量をELISA法で測定した。
歯周炎の評価としては,マウスの上顎臼歯部歯槽骨吸収の程度を,河井らの方法に準じて,マウス臼歯のセメントエナメル境から歯槽骨頂までの距離の総和として評価した37)。
Pg感染によるC5aの増加とRA増悪への影響については,肝臓のC5 mRNA発現をreal-time PCR法で,血清中のC5a量はELISA法で,組織中のC5aは免疫染色で検討した。またC5aの破骨細胞分化への影響は,6~8週齢のSKGマウスを屠殺した後,両側の大腿骨由来単球系細胞(BMC)をsRANKL,M-CSF存在下でrecombinant C5aを添加して検討した。破骨細胞の形成はTRAP染色で評価した。
SKGマウスにPgを口腔から感染させ,全身的な影響と関節局所の変化を検討した。また,RA増悪メカニズムとして補体因子C5aに着目し,in vitroおよびin vivoの両面から検討した。さらに,RA患者血清を用いて,歯周病原細菌に対する血清抗体価とC5aの関連について検討した38)。
SKGマウスにRAを誘導するためのLA投与に加え口腔Pg感染を加えたものを実験群(Pg/LA群)とした。Pg/LA群はPgを口腔感染させた群(Pg群)と同様に歯槽骨吸収を引き起こし,歯周炎を発症していた。Pg/LA群では関節炎が強く誘導され,血清中のIL-6,MMP-3,ACPA量が増加していた。また血清中C5a量とarthritis scoreおよびanti-Pg abtibody titerはそれぞれ正の相関を示した(図1 参考文献38より引用改変)。さらに,関節局所のC5a発現が高く,C5aは骨破壊部位に多く局在していた(図2 参考文献38より引用改変)。歯周炎による歯槽骨吸収は,歯周病原細菌の侵襲と組織の免疫応答によって生じるが,破骨細胞は重要な役割を担っている。またRAの関節骨破壊も,破骨細胞によって生じることが知られている。次にC5aが破骨細胞分化に関与しているかを調べるためにSKGマウスから採取した骨髄由来単球系細胞をrecombinant C5aで刺激したところ,破骨細胞分化が活性化された(図3 参考文献38より引用改変)。

Pg感染RAのマウスの歯周組織,関節組織の評価
A.Pg口腔投与による歯槽骨の状態
各群のマウス6週後の歯槽骨の写真を示す。矢印は骨吸収部位を示す。
B.Pg口腔投与が歯槽骨吸収に与える影響
各群のマウス6週後の歯槽骨吸収量は河井らの方法に準じて評価した。縦軸はCtrl群に対する各群の歯槽骨吸収量の割合を,横軸は各群をそれぞれ表す。各群間の比較はBonferroni補正のWelchのt検定を用いて行った。(**:p<0.01)
C.SKGマウス各群の足首関節写真
各群のマウス6週後の足首関節の写真を示す。
D.Arthritis scoreを用いた関節腫脹の評価
各群の関節腫脹をArthritis scoreで評価した。縦軸にスコアを,横軸に各群を示す。各群間の比較はBonferroni補正のMann-Whitney U testを用いて行った。(*:p<0.05)
Ctrl:コントロール群,LA:LA腹腔投与群,Pg:P.gingivalis口腔感染群,Pg/LA:P.gingivalis口腔感染+LA腹腔投与群を示す。

Pg感染RAモデルマウスの関節局所におけるC5aの局在
A-H.LAの腹腔内投与と同時にPgを口腔投与してから6週間後の,SKGマウス各群の足首関節組織の免疫組織化学染色像を示す。
I.C5a陽性領域の割合はPg/LA群は他の群と比較し有意に広かった(I,Ctrl群;0.98%,Pg群;2.3%,LA群;3.21%,Pg/LA群;4.17%)。

マウスリコンビナントC5aが骨髄由来単球系細胞の破骨細胞分化に与える影響
A.大腿骨骨髄由来単球系細胞を種々の濃度のマウスリコンビナントC5aで刺激し,実験開始5日後にTRAP染色で観察した結果を示す。Barは500 μmを示す。
B.Aで得た結果をグラフにしたものを示す。縦軸は3核以上の多核巨細胞の数を,横軸はC5a濃度をそれぞれ表す。
C.縦軸は破骨細胞による吸収窩の面積を,横軸はC5a濃度をそれぞれ表す。各群間の比較はTurkey-Kramer法を用いて行った。(*:p<0.05)
歯周炎を評価する方法として,ELISAによる歯周病原細菌に対する血清抗体価測定がある。患者の血清抗体価を測定することで歯周病原細菌の感染度を把握することが可能であるため,スクリーニングや治療のメンテナンス時の再発の検査として有用である。これまでに,関節炎を誘導したSKGマウスにPgを口腔感染させた群において,血清中のC5a量とPgに対する血清抗体価は正の相関を示した。そこで,Pg感染を伴ったRA患者において,血清中C5a量を解析した。次に,RA患者における種々の歯周病原細菌に対する血清抗体価をELISAで解析後,血清C5a量との関連を分析した。その結果,RA患者血清中のC5a量は健常者と比較し有意に高かった。種々の歯周病原細菌に対する抗体価を基に患者を陽性群と陰性群に分け比較したところ,Pg抗体陽性群は陰性群と比較し,血清中C5a量が有意に高かった(図4 参考文献38より引用改変)。以上のことから,RA患者においてPg感染がC5a産生増加に関与している,またこの上昇したC5aがRA増悪に関与していることが示唆された。

RA患者血清を用いたC5a量とPg血清抗体価の相関
A.健常者およびRA患者血清中のC5a量をELISAで測定し,グラフにしたものを示す。縦軸は血清中C5a量,横軸は各群をそれぞれ表す。Barは中央値を示す。各群間の比較はMann-Whitney U testを用いて行った。(*:p<0.05)
B-F.RA患者血清中のC5a量と歯周病原細菌(B:P.gingivalis,C:P.intermedia,D:A.actinomycetemcomitans,E:T.denticola,F:T.forsythia)に対する血清抗体をELISAで測定した。縦軸は血清中C5a量,横軸は各群をそれぞれ表す。Barは中央値を示す。各群間の比較はMann-Whitney U testを用いて行った。(*:p<0.05)
本研究から歯周病原細菌Pg感染がRA増悪に影響するメカニズムとして補体因子C5aの関与が明らかとなった(図5)。これまでも歯周炎が全身疾患に影響を与える分子として,歯周病原細菌Pgの菌体構築成分(OMP,LPS,GroEL,gingipain)や炎症性サイトカイン(IL-6,TNF-a,IL-1)が報告されている2,3)。RAや潰瘍性大腸炎はこれらの炎症性サイトカインが病態形成に影響しており,生物学的製剤(biologics)としてIL-6,TNF-α,およびこれらの受容体に対する中和抗体が治療薬として奏効している39)。また本研究で着目したC5aに関しても,阻害ペプチド,受容体に対する中和抗体が臨床治験で有効性を示している40)。歯周炎と,RAは骨破壊をきたす疾患として病態が類似している点から,今後このような生物学的製剤使用下での歯周炎への影響,歯周病治療への有効性を検討する必要があると考えられる。さらに,Pg菌体構築成分に関しても,Cortexyme社が,ADの原因の1つがPgであり,歯周組織から感染後,血行性に加齢や脳血管障害で脆弱化した血液脳関門を通過,脳内に侵入し,酵素gingipainを分泌することを報告している41)。この酵素はADの発症メカニズムで重要視されているタウタンパク質を切断し,AD特異的組織像へ変化のトリガーとなることを示唆している。Cortexyme社はgingipainの阻害剤を開発し,その有効性を複数の実験で示し,すでに臨床試験を開始している。今後他の疾患でもこのような治療薬の開発を歯科発で行えるような基礎研究が必要であると考えられる。
近年,腸内細菌叢の解析(microbiome)とその異常(dysbiosis)が全身疾患に与える影響について研究が進んでいる。腸内には1,000種,100兆個の細菌が生息していると言われている42)。本来細菌は免疫システムによって排除すべき異物として認識されるが,健康な状態では腸内細菌が免疫システムに認識され炎症反応を起こすことはない。それは免疫応答・寛容など宿主との複雑な相互作用の結果,恒常性が維持されているためである。これまでにマウスの実験によってPg感染が腸内のdysbiosisを引き起こすことが報告されている5)。そこで,Pg感染が腸管免疫の恒常性は破綻し,異常な免疫反応や代謝異常を引き起こすと仮定し,Pg感染による腸内細菌叢の変化とRAに対する影響を前述のSKGマウスで検討した。Pg感染させたSKGマウスの糞便からDNAを回収し,16s ribosomal RNA(16S rRNA)を指標とした次世代シークエンサーによるメタゲノム解析を行った。その結果,phylumの分類において対照群と比べて,LA投与群,Pg/LA投与群で菌叢が大きく変化していた。Pg投与群,Pg/LA投与群では,特にBacteroidetes門に属する菌の割合が増加し,Firmicutes門,Deferribacteria門に属する菌の割合は有意に減少した。次に,Pg/LA投与群の糞便を,Pg感染させていない別の新しいSKGマウスに経食道糞便移植(fecal microbiota transplantation:FMT)しLAを投与すると,これまでのPg口腔感染・LA投与モデル(Pg/LA投与群)よりも早期に関節炎増悪を認めた。以上のことから,Pg口腔感染によって誘導される腸内細菌叢の変化と,その結果生じる腸内の異常免疫と炎症性の変化がRAの増悪に直接影響することが示唆された。新潟大学・山崎和久教授の研究グループでもPg感染による腸内細菌叢の変化がRAや2型糖尿病の病態の悪化に影響しており,そのメカニズムの一端は,Pgが腸管粘膜のTh17/Tregバランスの破綻や宿主のアミノ酸代謝に影響を与えていることであると報告している43,44)。これからもPgを含めた口腔細菌と全身疾患の関連について新たな知見が報告されると予想されるが,Pgも菌株により線毛FimAのタイプにより菌の表現型が異なる点,Pgが歯周炎患者の50%で検出されるという報告があるにも関わらずRAや糖尿病を発症していない患者がいるという点からも,菌種で疾患と関連付けることは困難である。したがって今後は細菌叢の属,門レベルでの解析ではなく,菌株レベルで病原因子を解析することが必要となってくると考えられる。

本研究の概要を示す。RAの発症にはtwo-hit theoryが提唱されている。遺伝的素因に加えて,歯周炎,Pg感染のような炎症により,内因性PAD(PADI4)の増加がシトルリン化タンパク質(CP)の増加を引き起こす(first hit)。またPg由来PADもCP増加に影響する。その結果免疫寛容の破綻からACPAの過剰産生が引き起こされ,ACPA-CPによる免疫複合体の形成が関節内で起こることで関節破壊が進行する(second hit)。これらに加えて歯周炎,Pg感染,Pg由来arg-gingipainがC5a生成を促進することで破骨細胞分化促進が引き起こされることも,関節破壊に影響する。
稿を終えるに当たり,大学院生時代にご指導を頂きました国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター・菅井基行センター長,広島大学医系科学研究科・細菌学・小松澤均教授に心より感謝申し上げます。また,留学中にボストン フォーサイス研究所でお世話になりました,Martin A. Taubman先生,河井敬久先生に御礼申し上げます。本研究を遂行するにあたり,広島大学歯周病態学研究室の先生方,特に学生時代から公私にわたり面倒を見ていただいた,藤田剛前准教授,補体因子C5aに関する研究,腸内細菌に関する研究に尽力いただいた広島大学病院・宗永修一助教,濱本結太博士の協力のもとすすめることができました。最後に,大学院時代から現在までの研究遂行にご指導頂いた広島大学医系科学研究科・歯周病態学研究室・栗原英見前教授に厚く御礼申し上げます。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。