日本歯周病学会会誌
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ミニレビュー
歯周治療におけるインプラント治療―最適な上部構造体装着法についての考察―
西田 哲也佐藤 秀一
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2022 年 64 巻 1 号 p. 1-8

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要旨

歯周病患者は歯を喪失することが多いため,歯周治療において欠損補綴は比較的頻度の高い治療である。また,歯周病により歯を喪失した場合,十分な残存歯数や咬合支持組織量がないばかりか,歯冠歯根比など力学的なバランスも悪化する傾向にあるため,欠損補綴は難症例となることをしばしば経験する。欠損補綴には様々な手法がある。従来型の欠損補綴であるブリッジや有床義歯は,欠損した歯が担っていた咬合負担を残存歯や顎堤に分散させるが,インプラント治療では残存歯に負担をかけることなく,また,連結することによる再治療の確率の上昇,非生理的な咬合負担,口腔清掃の煩雑さなど様々なリスクやディメリットを回避し欠損補綴を完了することができる。すなわち,インプラント治療は歯周治療の欠損補綴に多大な恩恵をもたらす治療法といえる。しかしながら,歯周病患者のインプラント治療は,細菌因子,宿主因子,環境因子などの影響を受けるため,厳密な管理や処置が必要となる。そこで本論文では,歯周病患者におけるインプラント治療の上部構造体の装着法について考察する。

1. オッセオインテグレーテッドインプラント

生体組織内に埋入された外来物質は,排他,分解,被包化などの作用を受け,生体組織内に安定して存在することは出来ないが,チタンは骨組織の中で安定かつ一体化することがBrånemarkらによって発見された。Brånemarkらはイヌを用いた研究で上下顎に埋入されたチタン製のフィクスチャーが数年の使用に耐え,組織学的にも骨とインプラントの間には軟組織を認めることなく連続していたことを報告した1)。1965年に無歯顎患者を対象に臨床応用され2),のちにこの結合様式は,骨の(Osseous)癒合(integration)の意味から「Osseointegration:オッセオインテグレーション」と命名され,現在のオッセオインテグレーテッドインプラントの歴史が始まっている。

当初は無歯顎症例に行われたインプラント治療は,部分欠損症例や単独歯欠損症例にも応用され,現在,インプラント治療は高い予知性を期待できる欠損補綴の一方法となっている。ルートフォーム(歯根型)インプラントのほとんどは,このオッセオインテグレーテッドインプラントである。

2. 歯周病患者へのインプラント治療のメリットとリスク

永久歯の喪失原因の41.8%は歯周病とされ3),口腔疾患中で最多である(図1)。必然的に歯周治療における口腔機能回復治療では,欠損補綴の割合も増え,また,残存歯の歯周組織もダメージを受け咬合負担能力の低下を招いているケースも多いことから,しばしば難症例となる。

インプラント治療は,ブリッジや局部床義歯と異なり支台歯に侵襲や咬合負担の増加を強いることなく,口腔機能回復治療を完結できるメリットが大きい。また,ブリッジや連続冠のように歯を連結させる必要もないことから,本来の歯が持つ様々なリスクを確率論的に増やす懸念もなく,有床義歯のように歯根膜負担と粘膜負担の差異から生じる様々なリスクも回避することができる。何よりも,欠損補綴におけるインプラント治療は,より自然に近い形態に口腔機能を回復させることができ,患者の使用感や満足感にも大きく寄与し,QOLの向上につながる4)

一方,歯周病患者へのインプラント治療において,歯周炎とインプラント周囲炎は細菌学的,病理学的に同じものであることに留意しなければならない。インプラント治療後のインプラント周囲溝には,短期間のうちに隣在歯の歯周ポケットから細菌感染することが知られ5),インプラント治療の失敗例のインプラント周囲溝内の細菌を調べた研究では,グラム陰性菌やスピロヘータなど歯周病関連細菌の割合が高いことが報告されている6)。喫煙,糖尿病,歯周炎がインプラント治療の結果にどのように影響するかを調査した結果,歯周病を有する患者は,適切な歯周治療が行われればインプラントの生存率に影響を及ぼさないが,合併症は増え成功率は低下する傾向にあると報告されている7)

以上のメリットとリスクから,インプラント治療は歯周病患者の理想的な欠損補綴と考えられるが,適切な歯周治療,注意深いインプラント施術とメインテナンスが行われる必要がある。

図1

抜歯の原因(文献3)より引用)

3. 歯周組織とインプラント周囲組織について

口腔機能回復治療でインプラント治療が選択された場合,同一口腔内に天然歯とインプラントが混在することになる。したがって,適切な施術とメインテナンスを行うためには,両者の類似点と相違点を理解する必要がある(表18-10)

表1

歯周組織とインプラント周囲組織の相違点と類似点

1) 類似点

歯もインプラントも歯槽骨によって支持され,歯槽骨は粘膜組織で覆われ外界である口腔と一定の距離が保たれる。この一定の距離は生物学的幅径と呼ばれ,天然歯で約2 mm,インプラントで約2.7 mmである。歯やインプラントの上部構造体と粘膜組織の接続部は接合上皮で,ヘミデスモゾームを介して付着しており,天然歯で約1 mm,インプラントで約1.2 mmである。

2) 相違点

歯もインプラントも生物学的幅径を有するが,その存在する意味が異なる。天然歯の生物学的幅径約2 mmの内訳は,上皮性付着約1 mmと結合組織性付着約1 mmであるが,インプラントの生物学的幅径約2.7 mmの内訳は,上皮性付着約1.2 mmと付着機構を持たない結合組織が約1.5 mmである。天然歯は歯根膜とセメント質で歯槽骨や粘膜組織に強固に付着されている。一方,インプラント周囲組織には歯根膜とセメント質が存在しないため,結合組織性の付着が構成されない。したがって,結合組織性付着を持たないインプラントでは,インプラント周囲溝に入り込んだプラークやセメントが天然歯と比べ深部まで侵入しやすいと考えられる。また,周囲粘膜組織のコラーゲン線維の走行は,天然歯は直行と平行が混在しているが,インプラントでは平行のみである。血液供給は,天然歯では歯根膜,歯槽骨,歯肉からの供給を受けるが,インプラントでは歯槽骨,歯肉からの供給になる。

3) 臨床的問題点

歯周組織とインプラント周囲組織で,重要な着目点は両者の付着歯肉(あるいは粘膜)の構成内容の違いである(図2)。両者の付着歯肉(あるいは粘膜)において,天然歯は上皮性付着・結合組織性付着・骨との線維性の付着となっているが,インプラントでは上皮性付着・結合組織・骨との線維性の付着で構成されている。しかし,歯周病患者では歯周組織破壊により,角化歯肉(あるいは粘膜)幅が3-5 mmと狭い場合も多く,骨頂と歯肉歯槽粘膜境が一致している場合(図3)や,歯肉歯槽粘膜境が骨頂よりも高位に位置している場合もしばしば経験する。天然歯の場合,角化歯肉幅が狭く,付着歯肉幅が0 mm以下(MGI)であっても,実際には歯根面と歯肉は約1 mmの結合織性付着が存在する可能性が高いと考えられる。一方,インプラントでは角化粘膜幅が狭く,付着粘膜幅が0 mm以下(MGI)となった場合,結合組織性付着が存在しないため,プラークや食物の侵入に対する封鎖性や頬粘膜などの動きに対する抵抗性は弱いと考えられる。

図2

歯周組織とインプラント周囲粘膜。GM:歯肉辺縁,PM:インプラント周囲粘膜辺縁,bIS:インプラント周囲溝底,aJE:上皮性付着根尖側端,CEJ:セメントエナメル境,BC:歯槽骨辺縁,MGJ:歯肉歯槽粘膜境。付着歯肉のうち,緑色の破線の部分が歯または骨と強固に付着する。

図3

歯肉歯槽粘膜境の位置が歯槽骨辺縁と一致する歯周組織とインプラント周囲粘膜。GM:歯肉辺縁,PM:インプラント周囲粘膜辺縁,bIS:インプラント周囲溝底,aJE:上皮性付着根尖側端,CEJ:セメントエナメル境,BC:歯槽骨辺縁,MGJ:歯肉歯槽粘膜境。付着歯肉のうち,緑色の破線の部分が歯または骨と強固に付着する。

4. インプラント上部構造体の外冠の装着法11)

インプラントは,骨内に埋入されるインプラント体(フィクスチャー)と骨縁上の構造体である上部構造体に分かれる。上部構造体は,歯の形を模倣した外冠とその外冠とインプラント体をつなげるアバットメントで構成される。また,インプラント体とアバットメントが一体となっているワンピースタイプ,それらが分かれているものをツーピースタイプと呼ぶ(図4)。ワンピースタイプ,ツーピースタイプともに,アバットメントに外冠を装着する方法にはさまざまな方法がある。

図4

インプラント基本構成

1) セメント方式

セメント方式は,通常のクラウン・ブリッジの手法と同じく仮着材や合着材を用いて外冠をアバットメントに装着する(図5a)。アバットメント―外冠間にはセメンティングによる浮き上がりを防止するためセメントのスペースを設定するが,このスペースが施術や技工のエラー(誤差)を吸収することができる。このため技術的に簡単で,製作費用も安価となることから,多くの臨床家が採用している装着方式である。セメント方式には合着タイプと仮着タイプの2つの方法があるが,撤去用突起またはノッチがついていることで仮着であることを見分ける。セメント方式の場合,セメントの取り残しや経時的なウォッシュアウト(溶出)に注意する。

図5

アバットメントに外冠を装着する方法。a:セメント方式,b:オクルーザルスクリュータイプ

①  合着タイプ

合着用セメントを用いて装着する方法で,外冠の撤去が必要となった場合は,通常のクラウンと同様に切断し撤去する。

②  仮着タイプ

仮着用セメントを用いて装着する方法で,仮着しているため,外冠の撤去が必要となった場合は術者による撤去が可能である。ただし,意図せず外れたり,外れなかったりすることもあるので注意が必要である。仮着材の経時的なウォッシュアウトがあるため,定期的な着脱を行う必要がある。

2) スクリュー方式12)

スクリュー方式は,基本的に術者可撤式である。セメント方式と異なりセメントの取り残しや経時的なウォッシュアウトがないため,術者による管理が可能である。スクリュー方式にはオクルーザルスクリュータイプとサイドスクリュータイプがある。

①  オクルーザルスクリュータイプ(図5b

アバットメントと外冠が一体化した上部構造体を,アバットメントスクリューでインプラント体に装着する方法である。利点として,比較的簡便で安価に行えることが挙げられる。欠点としては,咬合面にアクセスホールが開くため,審美性,正確な咬合付与,そして陶材の場合はチッピングなどの問題が生じることが挙げられる。

②  サイドスクリュータイプ

サイドスクリュータイプは,オクルーザルスクリュータイプの欠点を解消するため,側方からスクリューを挿入し外冠をアバットメントに固定する方法である。咬合面にアクセスホールが設定されないため,セメント方式と同様に審美的で機能的な歯冠形態にすることができる。しかしながら,技工作業の煩雑さ,セグメントが増えることでのエラー発生率の上昇,作製コストが高価,複数歯においては口腔内試適ステップが必須となるなどのディメリットがある。

サイドスクリュータイプの多くは,スクリューが舌側に設定されることが多い。サイドスクリュータイプには,タップ(ネジ切り)の設定位置によりアウタータップ(図6a)とインナータップ™(図6b)の2種類がある11)

図6

舌側サイドスクリューの種類。a:アウタータップ,b:インナータップTM

A) アウタータップ

外冠にタップが設定され,アバットメントにはディンプル(くぼみ)が付与されている。スクリューはロッキングスクリューと呼ばれ,長いロッド状のスクリューを外冠の厚みに合わせて切断し,切断面にはスリットが形成され,極小径のマイナスドライバーで取り外しを行えるように調整される。

オクルーザルスクリューに見られる欠点はないが,ロッキングスクリューは外冠の脱離を防止しているだけでアバットメント―外冠間の積極的な維持はしていないため,外冠とアバットメントは咀嚼運動により隙間が空く傾向にある。その隙間やロッキングスクリューの間隙から外冠の内部へ唾液やプラークの侵入が生じる欠点がある(図7a,b)。

図7

舌側サイドスクリューアウタータップの臨床例。装着後5年で外冠を外すと内部には多量のプラークを認める。a:口蓋側面観,b:外冠を外した状態

B) インナータップ™

使用されるスクリューはカウンターサンクスクリュー(皿ネジ)で,外冠にアクセスホール,アバットメントにタップが設定される。スクリューのヘッドはテーパー状のため,スクリューを締めることで外冠のアクセスホールは緊密に閉鎖され,外冠とアバットメントは密着する。適切に作られたアバットメントと外冠はフィットに優れ,内部へのプラークの侵入が極めて少ない(図8a,b)。また,アバットメント―外冠間のマージンを縁下の深い位置に設定可能であり,審美性に優れ,術後の審美障害も回避しやすい。アバットメント―外冠間にセメントのスペースは不要であることから,間隙はゼロレベルを目指して作製される。このため,高い技工技術と施術技術,熟練を必要とするのが欠点である。

それぞれの症例に適した方式を選択するが,多くは天然歯の補綴治療と共通事項の多いセメント方式が採られる。

図8

舌側サイドスクリューインナータップTMの臨床例。装着後4年で外冠を外したが内部にはプラークが認められない。a:口蓋側面観,b:外冠を外した状態

5. 歯周治療におけるインプラント上部構造体の装着法についての考察

インプラントの上部構造体の装着法を検討する多くのレビューがあり,基本的にはどのような装着方式であっても,予後の統計的な有意差はないとされている13-16)。しかしながら,スクリュー方式は技術的問題に伴う合併症が少ない傾向であったとされており16),セメント方式の約81%に残留セメントとインプラント周囲炎の兆候を認めたことから残留セメントがインプラント周囲炎発症の原因となる可能性が示唆されている17)。さらに,セメントの残留がある場合,歯周炎の病歴のある患者は歯周病の病歴のない患者よりも,インプラント周囲炎を発症する可能性が高いことが報告されている18)

日常臨床でも,外冠を仮着した際,仮着セメントの残存を認めることも多く(図9),また,セメントの残存に起因すると思われるインプラント周囲炎を経験する(図10)。

一方,インプラントの上部構造体のアバットメントスクリューの緩みは,7-11%で発生すると報告19)されており,術後に長期のメインテナンスを行う歯周治療では,保守性(メインテナビリティ)を考慮し術者可撤式あるいは患者可撤式のインプラント上部構造体とするべきと考える。

歯周治療におけるインプラント治療では,正確な咬合付与,セメントに起因するトラブルの回避,メインテナンス中の様々なアクシデントに対応する必要性から,上部構造体の外冠の装着方式はスクリュー方式のサイドスクリュータイプである舌側サイドスクリューインナータップ™を用いるのが最適であると著者は考える。

図9

仮着材の残存例。a:サイドスクリュータイプのスクリューが外れなくなりスクリューを切削除去。既存の外冠を仮着セメントで仮着。b:既存の外冠とアバットメントを外した状態。サイドスクリューのアクセスホールをセメント流出孔とし,慎重に余剰仮着セメントを除去するが,仮着材の残存を認める。c:再製後にアバットメントを外した状態。スクリュー方式であるためセメントは認めない。d:再製後の外冠を装着した状態。

図10

セメントの残存により発症したインプラント周囲炎

6. まとめ

歯周治療におけるインプラント治療の上部構造体については以下のことに注意する必要がある。

1)インプラント治療は,ブリッジや有床義歯と比べ,歯周治療の欠損補綴として有効である。

2)セメントの残留があった場合,歯周炎の病歴のある患者は歯周病の病歴のない患者よりも,インプラント周囲炎を発症する可能性が高くなるため,セメントを使わない上部構造体の装着方法が理想となる。

3)清掃性やメインテナンス中のアクシデントを考慮し,メインテナビリティの高い上部構造体を装着することが大切であり,それには,術者可撤式の上部構造体とする。

4)高いメインテナビリティを達成するため,上部構造体の外冠の装着方式は,スクリュー方式のサイドスクリュータイプである舌側サイドスクリューインナータップ™を用いるのが最適である。

謝辞

今回,ミニレビューを寄稿するに当たり,インプラント上部構造体の製作ならびにご助言を頂きました歯科技工士の中島清史氏に深甚なる謝意を表明します。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

References
 
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