2023 年 65 巻 4 号 p. 117-124
糖尿病は歯周病の主要なリスクファクターの一つで,Periodontal Medicineに関する全身疾患の一つである。糖尿病の状態を模倣するとき,過栄養すなわち高濃度のグルコース環境を使用することが多い。しかし最近は高齢化に伴う低栄養が問題になることが多いが,低栄養が硬組織再生に及ぼす影響は不明である。本研究ではグルコース欠乏状態におけるマウス骨芽細胞における硬組織分化に及ぼす影響について検討した。
マウス骨芽細胞様細胞(MC-3T3-E1細胞)は,マウス大腿骨から初代培養で樹立し不死化した細胞を使用し,生理学的コントロールとして100 mg/dLのグルコース濃度のα-MEMを使用し,グルコース欠乏モデルとして0 mg/dLのグルコース濃度のα-MEMを使用した。MC-3T3-E1細胞に対するグルコース欠乏状態でのグルコース代謝に関わる遺伝子発現のスクリーニングを行い,アルカリフォスファターゼの発現と細胞外マトリックスへのカルシウムの沈着について比較検討した。
Real Time PCR Arrayによる解析では,培養1週では生理学的コントロール群よりグルコース欠乏群のほうが30%減少している遺伝子は8種類あり,なかでも骨芽細胞の分化と生存に関与するThe phosphoinositide-3-kinase-protein kinase B(PI3K/AKT)経路の上流キナーゼの遺伝子であるpdk-1 mRNAについて検討したところ有意に減少していた。PDK-1の阻害剤であるBX-912を添加することでグルコース欠乏群と同様,細胞増殖能および硬組織分化能が低下した。
これらの結果からグルコース欠乏状態におけるMC-3T3-E1細胞の硬組織分化は,グルコース代謝に関与するPDK-1の減少により細胞増殖能や硬組織分化能が低下することが示唆される。
Diabetes mellitus is a major risk factor for periodontal disease, considered as one of systemic disease in the field of periodontal medicine. For mimicking the condition of diabetes mellitus, an over-nourished model, i.e., high glucose environment, is often used. Under-nutrition is often a problem in the aging population, but the effect of under-nutrition on hard tissue regeneration is unknown. In this study, we investigated the effects of glucose deprivation on hard tissue differentiation in mouse osteoblasts.
Mouse osteoblast-like cells (MC-3T3-E1) were established from mouse femurs in primary culture and immortalized in α-MEM in the presence of a glucose concentration of 100 mg/dL as a physiological control and 0 mg/dL as a model of glucose deprivation. The effects of glucose deprivation on the MC-3T3-E1 osteoblasts gene expression related to glucose metabolism were screened and compared with the presence of alkaline phosphatase and calcium deposition in the extracellular matrix.
Real-Time PCR Array analysis showed that the expressions of eight genes were decreased by 30% in the glucose-deprived group as compared with the physiological control group at 1 week of culture. The expression of pdk-1 mRNA, a gene involved in osteoblast differentiation and survival, was significantly decreased. BX-912, an inhibitor of PDK-1, decreased the cell proliferative ability and hard tissue differentiation ability in the control group as in the glucose-deprived group.
These results suggest that hard tissue differentiation in MC-3T3-E1 osteoblasts is mediated by PDK-1, which is involved in glucose metabolism.
糖尿病は最近の世界的な健康面の課題の一つであり,死因の第9位(世界保健機関,2021年)にあげられ,2021年の統計では世界で670万人が糖尿病が原因で死亡していると報告されている1)。また糖尿病は歯周炎の主要なリスクファクターの一つ2)で,歯周炎の高い罹患率と重症化が認識されており,「糖尿病の6番目の合併症」と位置付けられておりPeriodontal Medicine(歯周医学)の代表と言っても過言ではない3)。歯周組織の炎症から糖尿病発症への関連性の一つとして持続的な高血糖の発現が報告されている4)。リポ多糖(LPS)や歯周病菌の産物による慢性的な刺激により,感染を介したサイトカイン合成と分泌のアップレギュレーションサイクルが,糖尿病で作用するAGE(advanced glycation end product)を介した炎症性サイトカインの応答を増幅させることで代謝コントロールを複雑にさせる5)。感染とAGEを介したサイトカイン上昇という2つの経路の組み合わせが,糖尿病性歯周炎でみられる組織破壊が増大し,また歯周組織の感染が糖尿病の重症度や代謝コントロールの程度を複雑にし,結果として糖尿病と歯周病の間に双方向の関係をもたらすと考えられている6)。
最近,糖尿病患者においては過栄養状態だけではなく,高齢化に伴う低栄養が問題となっている。過栄養状態が続くと,炎症が拡大しやすくなり心血管リスクの亢進によって障害が残り,高齢になると低栄養に陥りやすくなる。高齢者によくみられる糖尿病の併存症として,認知症やサルコペニア,フレイルと共に歯周病があり,低栄養も指摘されている6)。ゆえに,今後過栄養だけではなく低栄養に関する研究,すなわち本研究のようなグルコース飢餓の状態を検討することは非常に今後重要となりうると考えられる。
糖尿病による歯周組織再生治療に及ぼす影響は様々報告されているが8),その持続的な高血糖の発現が前提となっているものが多く,低栄養に対する報告は少ない。グルコースはほとんどの哺乳類細胞にとって主要なエネルギー源でありATPを合成するために代謝される9,10)。様々な細胞や組織において生体の恒常性は,合成されたATPをエネルギー源として維持される。他の様々な組織と同様に,骨組織もグルコースを代謝し,恒常性を維持するためにグルコースを利用する。グルコースは細胞の増殖や分化など様々な生体機能を制御し,生体の恒常性を維持している11-13)。高濃度のグルコースは歯周組織の細胞の増殖や分化を抑制するため,生体の恒常性を維持するためには最適なグルコース濃度が必要である13)。我々は過去にグルコース濃度を変化させることによって,グルコース飢餓の環境が歯肉線維芽細胞や歯根膜細胞に及ぼす影響について検討した9,10,15)。
本研究ではマウス骨芽細胞様細胞(MC-3T3-E1細胞)がグルコース飢餓の環境においてどのような遺伝子に変化があるかについて網羅的に検討し,該当している遺伝子がMC-3T3-E1細胞の硬組織形成に及ぼす影響について検討した。
MC-3T3-E1細胞は,マウス頭蓋冠から初代培養で樹立し不死化した細胞を理研バイオリソース研究センター(つくば市,茨城)で購入した。MC-3T3-E1は10% heat-inactivated fetal bovine serum(FBS;HyClone,Thermo Fisher Scientific,MA,USA)および抗菌・抗真菌薬(100 U/mL penicillin,100 μg/mL streptomycin,and 25 μg/mL amphotericin B;ナカライテスク(株),京都)を添加したα変法イーグル最小必須培地(α-Minimum Essential Medium;α-MEM)にて37℃ 5%の気相下で培養し,コンフルエントに達した後,0.25% trypsin- 0.1% ethylenediaminetetraacetic acid処理を施し,ディッシュからはがして継代培養を行い,実験に供試した。
MC-3T3-E1細胞は生理学的コントロール培地として100 mg/dLのグルコース濃度のα-MEMを使用し,グルコース欠乏モデル培地として0 mg/dLのグルコース濃度のα-MEMを使用した。
RNAの抽出とPCRアレイを用いた解析24穴プレートに5×104 cells/mLの密度でのMC-3T3-E1細胞を100 mg/dLのグルコース濃度の培地にて播種し,コンフルエントに達してから生理学的コントロールとグルコース欠乏モデルの増殖培地で培養した。1週間培養し,培養上清を採取し,細胞はPBSで洗浄後QIAcubeⓇとRNeasy Mini Kit(QiagenⓇ,ドイツ)を用いてTotal RNAを抽出した。各RNA検体1 μgからSuperscript™ VIRO Synthesis System(Invitrogen;Life Technologies Corporation,Carlsbad,CA)を用いて逆転写を行いcDNAを作製した。各検体をグルコース代謝に関わる遺伝子発現のスクリーニングを目的としてReal Time PCR Arrayによる解析(Taqman™ Array:Mouse Glucose Metabolism(Applied biosystems;Life technologies Inc,CA,米国))を用いて行った。PCR Arrayは製品プロトコールに則って行った。PCRアレイによる解析はExpressionSuite™ Software(Applied Biosystems,Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)用いて行い,グルコース欠乏モデル培地の検体が生理学的コントロールより著しく低下している遺伝子を抽出した。
Real-time PCR遺伝子発現は,定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイ(TaqMan;Applied Biosystems)を用いて測定した。MC-3T3-E1細胞を96ウェルプレートに増殖培地で5×104 cells/mLの密度で播種し,3種の条件の培地で1週間培養した。全RNAを溶解バッファーで溶解し,RNeasy Mini Kit(Qiagen Inc,Venlo,Netherlands)を用いて単離した。PrimeScript Reagent Kit(タカラバイオ株式会社,大津市)を用いて,各サンプルから全RNAを一本鎖DNAに逆転写した。3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ(以下,PDK-1とする)の遺伝子発現(Taqman Gene Expression Assay,Pdk-1:Hs00554300_m1)をQuantoStudio 3 Real-Time PCR System(Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。各群の遺伝子発現はΔΔCt法を用いて算出し,GAPDH発現に対して標準化した。
細胞増殖能の測定PDK-1の特異的阻害薬としてBX-912(Sigma-Aldrich;Merck Inc.,St. Louis,MO,USA)を使用した。96穴プレートに1×104 cells/mLの密度でMC-3T3-E1を播種した細胞を24時間静置し,3種の条件下で培養した。すなわち生理学的コントロール培地とグルコース欠乏モデル培地,そして生理学的コントロール培地に0.5 μM BX-912を加えた培地の3種で行なった。培養1,3,5日後の細胞増殖がCell Count Reagent SF(ナカライテスク)を用いて450 nmの吸光度を測定した。また,クリスタルバイオレットを用いて培養1,3,5日後のMC-3T3-E1を染色し,オールインワン顕微鏡(BZ-II;Keyence(株),大阪)にて撮影した。
骨芽細胞分化骨芽細胞分化の評価には,3種の培地に50 μM L-ascorbic acid 2-phosphate(ナカライテスク),10 mM β-glycerophosphate(富士フイルム和光純薬(株),大阪)および10 nM dexamethasone(富士フイルム和光純薬)含有の骨芽細胞分化培地を使用した。
24穴プレートに5×104 cells/mLの密度でMC-3T3-E1を通常グルコース濃度の培地にて播種し,コンフルエントに達してから骨芽細胞分化培地で1,2週間培養した。
アルカリフォスファターゼ(ALP)活性MC-3T3-E1を5×104個/mlの密度で24ウェルプレートに播種し,3種の条件下の骨芽細胞分化培地に交換した。1週間の分化誘導後,細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し0.2% Triton X-100(Sigma-Aldrich)300 μLで溶解し,ワンステップp-ニトロフェニルホスフェート(1 Step pNPP;Thermo Fisher Scientific)を用いてALP活性を測定した。ALP活性を標準化するため,DNAはDNA Assay Kit(PicoGreen dsDNA Assay Kit;Invitrogen,Carlsbad,CA,米国)を用いて測定した。また同様に,ALP染色キット(Sigma-Aldrich)を用いて各時点でALP染色を行い,ALP染色の染色強度をImageJソフトウェア(National Institutes of Health)を用いて評価した。
石灰化物形成能の測定2週間分化誘導後,細胞をPBSで洗浄し,70%エタノールで固定しアリザリンレッド(富士フィルム和光純薬)で室温で5分間染色した。また細胞を10%ギ酸で回収し,細胞溶解液を用いて細胞外マトリックスのカルシウム(Ca)の沈着をCaテストキット(カルシウムEテストキット;富士フィルム和光純薬(株))を用いて測定した。反応液の吸光度は,96ウェルマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製)を用い,メーカーのプロトコールに従って610 nmで測定した。
統計解析得られたデータはSPSSソフトウェア(バージョン19.0;IBM,Armonk,NY,USA)を用いて解析した。全ての実験は3回行いデータは平均値±標準偏差(SD)で示し,一元配置分散分析(ANOVA)を用い,Tukeyの有意差検定を用いて決定した。統計的有意水準はP < 0.05とした。
図1に示すとおり,96遺伝子のPCRアレイ解析の結果,培養1週では遺伝子発現で生理学的コントロール群よりグルコース欠乏群のほうが増加している遺伝子が15遺伝子,減少しているのが65遺伝子,変化が認められないのが16遺伝子であった。
減少している65遺伝子のうち30%減少している遺伝子はdld,pfkl,eno1,pdk1,eno3,tpi1,pdm2,rbksの8種類が認められ,中でも骨芽細胞の分化と生存に強く関与するThephosphoinositide-3-kinase-protein kinase B(PI3K/AKT)経路の上流脂質の遺伝子であるpdk-1 mRNAに着目し,リアルタイムPCRで遺伝子発現を確認すると,図2に示す通りグルコース欠乏群で有意に減少していることが認められた。

クラスター解析によるグルコース欠乏状態における遺伝子発現の変動を同定した結果,pdk-1 mRNAの著しい発現の低下が認められた。

生理的グルコース状態とグルコース欠乏状態でpdk-1 mRNAの発現を比較すると,グルコース欠乏状態のほうが著しく有意に発現が低下した(††p<0.01 vs control)。
MC-3T3-E1の細胞増殖について,生理学的コントロール群,グルコース欠乏群およびBX-912含有群の3群で検討した。図3に示すように,培養1日目では各群ともに有意な差が認められなかったが,培養3日および5日において生理学的コントロール群と比較してグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下した。クリスタルバイオレット染色において生理学的コントロール群,グルコース欠乏群およびBX-912含有群の3群において細胞形態に著明な変化は認められなかった。

生理的グルコース状態とグルコース欠乏状態とBX-912含有群の3群においてMC-3T3-E1細胞の細胞増殖について比較すると,培養3,5日で生理学的コントロール群と比較してグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下した。クリスタルバイオレット染色において細胞形態に著明な変化は認められなかった(††p<0.01 vs control)。
ALP活性は図4Aに示すように培養14日において生理学的コントロール群と比較してグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下した。またALP染色においても同様の傾向を示した。

A.培養14日においてALP活性を比較するとグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下し,ALP染色においても同様の傾向を示した(**p<0.01 vs 0 mg/dL,†p<0.05,††p<0.01 vs control)。B.培養14日において細胞外マトリックスへのカルシウムの沈着は生理学的コントロール群と比較してグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下した。またアリザリンレッド染色においても同様の傾向を示した(††p<0.01 vs control)。
細胞外マトリックスへのカルシウムの沈着について検討した結果,図4Bに示すように培養14日において生理学的コントロール 群と比較してグルコース欠乏群,BX-912含有群ともに有意に低下した。またアリザリンレッド染色においても同様の傾向を示した。
骨芽細胞と破骨細胞は骨のリモデリングと骨組織の恒常性の維持に関与している15,16)。骨芽細胞は骨形成に直接関与しており,骨再生研究において不可欠である。未分化間葉系骨髄細胞は組織工学において一般的に用いられる宿主細胞種の一つである。特定の条件下で未分化間葉系骨髄細胞は,骨芽細胞,脂肪細胞,軟骨細胞よび神経細胞などに分化するよう誘導することができ,組織の修復と再生に関与する。また未分化間葉系骨髄細胞は骨芽細胞の主要な供給源でもある。未分化間葉系骨髄細胞が遊走,増殖,分化を経て骨芽細胞を形成し,新しい骨組織の形成が導かれる。
高濃度のグルコースの環境が骨芽細胞に及ぼす影響については多くの研究が報告されている13)が,低濃度のグルコースの環境が骨芽細胞に及ぼす影響について検討した研究は少ない。我々は過去に低濃度のグルコースの環境が歯根膜細胞に及ぼす影響について検討し,グルコース濃度の変化によって細胞増殖,遊走および硬組織分化能の低下へと導くことが証明され,それは細胞の恒常性すなわち生存維持のためのオートファジーによるものだと示唆された15,18)。
今回,本研究では生理学的コントロール群に比べグルコース欠乏群において大きく発現が減少している8遺伝子の中で,骨芽細胞の分化と生存に関わる遺伝子としてPdk-1を選択した。PI3K/ACTシグナル伝達経路は,細胞増殖,分化,アポトーシス,グルコース産生などの制御に関与している19)。PI3Kは,いくつかのアポトーシス経路における重要な制御点である。PI3Kが活性化されると,セカンドメッセンジャーのPIP2とPIP3が誘導される。AKTはPI3KとPIP3の重要な下流の標的因子である。PIP3は細胞膜に取り込まれたPIP3と相互作用し,Pdk-1によって部分的にリン酸化され活性化されことによって下流の経路を制御し,細胞の生存を促進する20)。PI3K/AKTシグナル伝達経路が骨芽細胞の増殖と分化を制御していることが報告されている20)。とくにPDK-1タンパク質 が骨芽細胞の増殖と分化を制御していることが報告されている21)。その観点から本研究では,Pdk-1遺伝子を選択し,PDK-1タンパク質を阻害するBX912を使用して細胞増殖および硬組織形成について検討した。
まず,PCRアレイを用いて選択したPdk-1遺伝子について,リアルタイムPCR法解析によってグルコース欠乏群ではpdk-1 mRNAの発現が有意に著しく低下することが認められた。Serebrovskaら22)は境界型糖尿病患者の血液を利用した臨床研究で,Pdk-1 mRNAの発現とグルコース濃度と密接な相関が認められ,インスリン分泌による血糖値の低下と共にその遺伝子発現が低下することを報告している。そのことはグルコース濃度によってpdk-1 mRNAの発現が低下する本研究の結果と類似している。
次に細胞増殖であるが,グルコース欠乏群では生理学的コントロール群と比べて有意に細胞増殖が低下しBX912添加群も同様に低下している。我々は,歯肉線維芽細胞や歯根膜細胞においてグルコース濃度の低下と共に細胞増殖が低下していることを報告しており8,15),同様の結果と考えられる。またBaiらは0.5 μM以下のBX912添加ではマウス未分化間葉系骨髄細胞の細胞増殖に著明な変化は認められないと報告している22)が,0.5 μMより濃い濃度では有意に細胞増殖が低下しており,類似した結果と考えられる。また細胞形態に著明な変化は認められないことも同様と考えられる。
硬組織分化への影響については,ALP活性と石灰化共にグルコース欠乏群では生理学的コントロール群と比べて有意に低下しBX912添加群も同様に低下している。我々は,歯根膜細胞においてグルコース濃度の低下と共に硬組織分化能が低下していることを報告しており14,17),同様の結果と考えられる。グルコース濃度と硬組織分化能の関係において,過去に様々な報告が散見される。Medeirosら11)やBalintら12)はグルコース濃度が高くなれば骨芽細胞の分化を抑制し,García-Hernándezら13)は分化を促進させると報告している。またBX912添加群はBaiらの報告23)と同様にALP活性と石灰化共に硬組織分化能を低下しており,PDK-1を介したグルコース代謝と細胞増殖および骨芽細胞分化は関連があると示唆される。
本研究の実験結果からマウス骨芽細胞の硬組織分化はグルコースの濃度に依存し,グルコースの濃度の低下によってグルコース代謝に関与するPDK-1を介し硬組織分化能も低下することが示唆される。
本研究の一部は,日本学術振興会科学研究費学術研究助成金(21K09946,22K17084,22K09993,23K19761)によって行われた。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。