2024 年 66 巻 2 号 p. 85-94
日本歯周病学会会員の職種別喫煙状況や禁煙支援の現状とその関連要因を明らかにするため,2022年時の会員にweb質問票調査を実施した。解析対象は1,396名(回収率11.2%)で,喫煙状況は,非喫煙者945名(67.7%),前喫煙者414名(29.6%),喫煙者37名(2.7%)となった。なお,喫煙者の内訳は,紙巻きタバコ単独13名(35.1%),加熱式タバコ(HTP)単独15名(40.5%),水タバコ単独1名(2.7%),紙巻きタバコとHTPの併用4名(10.8%),HTPの併用3名(8.1%),紙巻タバコと電子タバコの併用1名(2.7%)であった。次に,歯周病患者に対する禁煙支援は,すべての患者に実施240名(18.3%),必要時に実施656名(50.1%)であった。さらに,禁煙支援の関連要因は,歯科医師では,50歳以上,KTSND得点規準範囲9点以下,重度歯周病との関連を認識している者の3要因が関連していた(P < 0.05)が,歯科衛生士では有意な関連要因がみられなかった。したがって,歯科医師は,喫煙に対する正しい知識を持つ者がより禁煙支援を実施していた。このことから,禁煙支援の知識や正しい認識の普及等の啓発により,歯科医療職の禁煙支援実施率の向上をめざし,禁煙支援を行いやすい環境を作ることが急務であると考えた。
We conducted a web-based questionnaire survey of members of the Japanese Society of Periodontology in 2022 to determine their smoking status and factors associated with their provision of smoking cessation support to their patients. The responses of 1,396 respondents (corresponding to a response rate of 11.2%) were analyzed. Of the respondents, 945 (67.7%) were non-smokers, 414 (29.6%) were former smokers, and 37 (2.7%) were current smokers. Of the current smokers, 13 (35.1%) were exclusively cigarette smokers, 15 (40.5%) exclusively used heated tobacco products (HTPs), and one (2.7%) smoked a water pipe; of the remaining smokers, 4 were dual users of cigarettes and HTPs, 3 were dual-type HTP users, and one smoked both cigarettes and e-cigarettes. Of the participants, 240 (18.3%) consistently provided smoking cessation support to their patients with periodontal disease, whereas 656 (50.1%) did so only when they felt it was necessary. Three factors were significantly associated with the dentists providing smoking cessation support (P < 0.05): age ≥ 50 years, score on the Kano Test for Social Nicotine Dependence of ≤ 9, and awareness of the relationship between smoking and severe periodontal disease. Among dental hygienists, there were no statistically significant factors associated with the provision of support to patients for smoking cessation. Hence, dentists were more likely to provide support for smoking cessation, but only when they were aware of the impact of smoking. It is therefore necessary to disseminate correct knowledge and awareness among dental practitioners about the need to provide smoking cessation support to their patients and to create an environment that facilitates provision of smoking cessation support by dental practitioners and their staff.
本邦の成人喫煙率は,2013年に21.6%であったのに対し,2022年には16.7%と,この10年間で徐々に減少してきている1)。しかし,2014年以降,加熱式タバコ(Heated Tobacco Products:HTP)が普及し始め,2016年4月にアイコスⓇ(IQOS,フィリップモリスインターナショナル,ニューヨーク,アメリカ),2017年10月にグローⓇ(glo,ブリティッシュアメリカンタバコ,ロンドン,イギリス),2018年7月にプルーム・テックⓇ(Ploom・TECH,日本たばこ産業,東京,日本),2020年10月にリル ハイブリッドⓇ(lil HYBRID,フィリップモリスインターナショナル,ニューヨーク,アメリカ)と,次々に全国販売され,種類が増加してきている2)。そして,全喫煙者の内のHTP使用者率は,2019年には11.3%まで急増してきている3)。
日本歯周病学会では,紙巻きタバコの喫煙状況に関して,評議員(2006年)4),歯周病専門医(2009年)5)および全会員に向けた調査(2015年)6)を行ってきた。そこで,前述のように2014年以降急増しているHTP等を含めた喫煙状況調査を実施する必要がある。
喫煙者は全身疾患だけでなく,歯周病にも罹患しやすく悪化しやすいことが知られている7)。また,喫煙による口腔内への影響としては,味覚障害,口臭,粘膜疾患,口腔癌,歯肉メラニン色素沈着等が報告されており,歯周治療の予後が悪い7)。一方,禁煙により歯周病のリスクは軽減され,治療効果も上がることが報告されている8,9)。禁煙は,生活習慣病の共通した予防法であり,歯科でも禁煙を勧めることは,歯周病と生活習慣病の予防に有効性が高いことも報告されている10)。
歯科領域での禁煙支援の現状について調査した先行研究は散見されるのみである4,11)。しかし,歯科領域で禁煙支援を行う意義として,喫煙により口腔内に生じた変化を実際に患者に見せ,認識させやすいこと,そして,禁煙した場合に口腔内の状況や変化から,その効果を患者自身が確認しやすいこと等が考えられる10)。歯科領域での禁煙支援はこのように対象者の禁煙動機を直接高めることができるため重要性が高い。
そこで本研究では,日本歯周病学会会員のHTPを含めた喫煙状況や,禁煙支援の現状とその関連要因を明らかにするために質問票調査を行った。
2022年9月時点の特定非営利活動法人日本歯周病学会会員12,472名に対し,無記名の喫煙に対するweb質問票調査を実施した。なお,Web質問票調査は,全会員にメールにて,調査の目的,意義および質問票のURLを配布し,調査協力を求めた。調査期間は,2022年9月22日から2023年3月末までの6か月間とした。
調査項目は,対象者の基本属性として,性別,年齢層,所属,職種について回答を求めた。次に,喫煙関連項目として,紙巻きタバコ,HTP,電子タバコ,無煙タバコ,水タバコの現在および過去の喫煙状況を,喫煙未経験者(吸ったことがない),試し喫煙者(試しに吸ってすぐやめた),前喫煙者(やめた),喫煙者(吸っている)にわけて調査した。なお,試し喫煙者は,少なくとも1回は喫煙したが100本未満の者とした12)。また,禁煙経験の有無,禁煙に対する行動変容のステージ,勤務先の禁煙対策,家族や同居者の喫煙状況,歯周病患者の禁煙支援の現状と認識,加濃式社会的ニコチン依存度(Kano test for social nicotine dependence:KTSND)13)を加えた。さらに,臨床従事者に対して禁煙支援の現状や認識を調査するために,患者の喫煙状況の把握,禁煙支援の現状,禁煙支援を行わない理由およびHTPに対する認識を調査した。禁煙支援の現状については,「ほとんどすべての患者に行っている」,「必要と思われる場合に行っている」,「やろうと思っているがまだ行っていない」,「行うつもりはない」を順序尺度として用いた(表1)。職種別の禁煙支援の関連要因を評価する際には,「ほとんどすべての患者に行っている」と「必要と思われる場合に行っている」を実施群,「やろうと思っているがまだ行っていない」「行うつもりはない」を未実施群とした。
KTSNDは,喫煙者がタバコの健康被害を否定したり,喫煙を文化的,社会的に許容される行動として自己正当化しようとする,喫煙に対する誤った認識(社会的ニコチン依存)を評価する尺度である13)。質問項目は10問で,4検法,30点満点で9点以下が規準範囲で,点数が高いほど喫煙を美化,合理化し,健康被害を否定する意識が高く,クロンバックα係数は0.77である13)。
歯科医師や歯科衛生士における禁煙支援の関連因子の分析は,χ2検定,受動喫煙曝露状況別のKTSND得点の比較には,Mann-Whitney U検定,喫煙状況別のKTSND得点の比較には,Kruskal-Wallis検定を用いた。統計解析は,Stata(version16,Stata Corp,College Starion Texas,USA 2019)を用いた。
なお,本研究は,日本歯周病学会倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号 第JSP2021001号,2022年3月23日)。対象者の個人情報が公表されないこと等を説明文書に記載し,質問票に回答し登録された時点で,研究についての説明を理解し,趣旨について納得し,研究への参加に同意したものとした。

背景因子と質問票の調査項目
解析対象は1,396名(回収率11.2%)となった。
1. 職種別の基本属性(表2)対象者の職種は,歯科医師1,068名(76.5%),歯科衛生士311名(22.3%),歯科技工士2名(0.1%)等で,歯科医師,歯科衛生士の順で,両者が大半を占めた。次に,性別は,男性815名(58.4%)であった。年齢層は40歳代が最も多く,401名(28.7%)であった。さらに,所属は,開業医912名(65.3%)が大半を占めた。

職種別の性別,年齢層および所属
対象者全体の喫煙状況は,非喫煙者945名(67.7%),前喫煙者414名(29.6%),喫煙者37名(2.7%)であった。喫煙者の内訳は,紙巻きタバコ単独13名(35.1%),HTP単独15名(40.5%),水タバコ単独1名(2.7%),紙巻きタバコとHTPの併用4名(10.8%)であった。なお,職種別の喫煙者の割合は各々,歯科医師28名(2.6%),歯科衛生士は,7名(2.3%)であった。
紙巻きタバコの喫煙者18名(1.3%)であった。職種別には,歯科医師14名(1.3%),歯科衛生士3名(1.0%)であった。
HTPであるアイコスⓇは,喫煙者14名(1.0%)であった。なお,職種別では,歯科医師9名(0.8%),歯科衛生士4名(1.3%)であった。
グローⓇは,全体で,喫煙者6名(0.4%)であった。なお,職種別では,歯科医師6名(0.6%),歯科衛生士はいなかった。
プルーム・テックⓇは,喫煙者5名(0.4%)であった。なお,職種別では,歯科医師5名(0.5%),歯科衛生士はいなかった。
リル ハイブリッドⓇは,前喫煙者,喫煙者はいなかった。なお,歯科医師,歯科衛生士ともに,試し喫煙者はいたものの全員が非喫煙者であった。
なお,対象者のHTPに対する認識は,健康に害がある1,258名(90.1%),禁煙の場所では使用できない1,243名(89.0%),依存性がある1,199名(85.9%),喫煙である1,197名(85.7%),の順に多かった。
また,喫煙者の禁煙経験のある者は,紙巻きタバコ16名(88.9%),アイコスⓇ 13名(92.9%),グローⓇ5名(83.3%),プルーム・テックⓇ4名(80.0%)等であった。
さらに,禁煙に対する行動変容ステージは,紙巻きタバコでは,無関心期2名(11.1%),関心期13名(72.3%),準備期3名(16.6%),アイコスⓇでは,無関心期2名(14.3%),関心期12名(85.7%),グローⓇでは,関心期6名(100%),プルーム・テックⓇでは,無関心期2名(40.0%),関心期3名(60.0%)であった。

職種別の喫煙状況(紙巻きタバコ,加熱式タバコ,電子タバコ,無煙タバコおよび水タバコ)
全体のKTSND得点中央値は,12.0で,規準範囲9点以下は,500名(35.8%)であった。
喫煙状況別のKTSND得点中央値は,非喫煙者11.0,前喫煙者13.0,喫煙者17.0で,喫煙者に比べ,非喫煙者,前喫煙者が低かった(P < 0.01)。次に,歯科医師の喫煙状況別のKTSND得点中央値は,非喫煙者11.0,前喫煙者13.0,喫煙者17.0で,喫煙者に比べ,非喫煙者,前喫煙者が低かった(P < 0.01)。また,歯科衛生士の受動喫煙曝露別では,曝露群11.0,非曝露群10.0で,受動喫煙曝露群に比べ,受動喫煙非曝露群が低かった(P < 0.05)。さらに,全体,歯科医師および歯科衛生士のKTSND得点は,試し喫煙者に比べ,喫煙未経験者が低かった(P < 0.05)。

喫煙状況,受動喫煙曝露状況別の加濃式社会的ニコチン依存度調査票(Kano test for social nicotine dependence,KTSND)
歯周病患者への禁煙支援について,ほとんどすべての患者に行っていると回答した者は,全体で240名(18.3%),必要と思われる場合に行っている656名(50.1%),やろうと思っているがまだ行っていない325名(24.8%),行うつもりはないと回答した者が88名(6.8%)であった。次に,患者に禁煙支援を行わない理由として,時間がない292名(20.9%),保険点数にならない264名(18.9%)が上位に挙げられ,方法がわからない240名(17.2%),資料がない190名(13.6%)も禁煙支援の阻害要因となっていた。
なお,歯周病患者に対する喫煙の認識については,吸うべきではない1,107名(79.3%),患者の自由にゆだねるべき270名(19.3%),わからない19名(1.4%)であった。一方,歯周病患者以外の患者の喫煙について,吸うべきではない911名(65.2%),患者の自由にゆだねるべきである446名(32.0%),わからない39名(2.8%)となった。
5. 歯科医師,歯科衛生士における禁煙支援の関連要因(表5)職種別の禁煙支援の現状は,実施群は歯科医師698名(68.2%),歯科衛生士195名(69.6%),未実施群は歯科医師326名(31.8%),歯科衛生士85名(30.4%)であった。
歯科医師の禁煙支援の関連要因については,年齢層は,49歳以下で実施群348名(65.2%),未実施群186名(34.8%),50歳以上で実施群350名(71.4%),未実施群140名(28.6%)と,50歳以上の方が実施している者が多かった(P < 0.05)。次に,所属は,大学,大学院,短大の実施群は174名(73.1%),未実施群は64名(26.9%),附属病院,関連病院の実施群は55名(74.3%),未実施群は19名(25.7%),開業医の実施群は457名(66.4%),未実施群は231名(33.6%)と,大学,大学院,短大や附属病院,関連病院において実施している者が多かった(P < 0.05)。そして,重症な歯周病患者に喫煙者が多い点については,そう思う,ややそう思う574名(70.4%),あまりそう思わない,思わない122名(59.5%)が実施しており,そう思うと回答した者の方が禁煙支援を行っていた(P < 0.01)。加えて,KTSND得点規準範囲9点以下の者は,259名(76.2%),10点以上の者は,439名(64.2%)が実施しており,9点以下の者の方が禁煙支援を行っていた(P < 0.01)。なお,歯科衛生士においては,有意差のある関連因子はなかった。

歯科医師,歯科衛生士における禁煙支援の関連要因
本研究の日本歯周病学会会員の歯科医師の喫煙率は2.6%(男性3.2%,女性0.8%)であり,これまで歯科医師の喫煙率を調査した先行研究と比べると低かった。2009年の歯周病専門医の調査では歯科医師の喫煙率は14.7%5),2015年の日本歯周病学会会員の調査では8.4%,2019年の愛知県歯科医師会の調査では11.5%であった14)。一方,2022年の成人男性の喫煙率は,男性27.1%,女性7.6%であることから1),本研究の喫煙率は,一般人と比べても低かった。一般的に医療職の喫煙率は非医療職と比べて低いことがこれまでも報告されている15)。たとえば,日本口腔外科学会会員(2019年)では,男性8.5%,女性2.2%という結果であり16),この喫煙率の減少について,学会による禁煙宣言や敷地内禁煙の施設の増加が影響していると考察されている16)。同様に,本研究対象の日本歯周病学会も2004年に禁煙宣言が示され17),多くの禁煙の資材等をホームページ上で示している。また,2020年に改正された健康増進法では,医療機関や診療所などは全て敷地内禁煙となり,歯科医師,歯科衛生士が働く場所は環境的にも整えられた。このように,本研究の喫煙率の低さも,社会的に環境が整えられたことが関連している可能性がある。
本研究の喫煙者の内訳として,紙巻きタバコ単独35.1%(男性34.5%,女性37.5%),HTP単独40.5%(男性41.4%,女性37.5%),紙巻きタバコとHTP併用10.8%(男性10.3%,女性12.5%)に対して,2019年の全国調査では,全体の喫煙率は男性27.1%,女性7.6%であり,その内訳として,紙巻きタバコ単独(男性68.1%,女性76.1%),HTP単独(男性22.1%,女性14.8%),紙巻きタバコとHTP併用(男性8.5%,女性8.8%)と報告されている18)。したがって,本研究対象者のHTP単独使用者40.5%と,一般人と比べて高いことが判明した。この理由は,本研究対象者の内,HTPは紙巻きタバコの代用品にはならないと回答した者は43.5%であり,半分以上の対象者は,HTPが紙巻きタバコの代用品になる,もしくはわからないと回答していた。HTPには,紙巻きタバコと同程度のニコチンが含有されており,紙巻きタバコと同様に依存を形成するにもかかわらず19),誤った知識を持っていたことが考えられた。なお,タバコに含まれる有害物質の曝露に安全域はなく,紙巻きタバコと比較して少量の有害物質の曝露であっても病気への罹患リスクが高まる可能性があり2),誤った認識により,HTPを紙巻きタバコの代用品として使用している可能性が高いと判断した。
本研究のKTSND得点中央値は12.0で,先行研究で6施設の病院の職員を調査した値とほぼ同程度であった20)。加えて,これまでにKTSNDを医療職対象に調査した研究では,KTSND得点平均は,非喫煙者12.7,前喫煙者16.0,喫煙者17.5と喫煙者が高かった21)。同様に,本研究でも喫煙状況別にみると,非喫煙者11.0,前喫煙者13.0,喫煙者17.0で,非喫煙者,前喫煙者に比べ,喫煙者が高かった。一方,KTSNDの規準範囲は9点以下であるが,先行研究や本研究においても,非喫煙者であっても10点以上という者もあり,規準範囲内の者は少なかった。さらに,2007年のみやこ禁煙学会参加者の報告22)では,医師や歯科医師のKTSND得点中央値は4.0,その他の職種は5.0と日本禁煙学会参加者であることから,他の先行研究と比べても大幅に低い値となった22)。また,KTSND得点規準範囲9点以下は35.8%と,半数を下回った。したがって,本研究対象者64.2%は医療職であっても禁煙への意識が低いと思われ,そのような会員に対する禁煙の意識を高めるような関わりが必要であると考えた。
本研究の禁煙支援の実施状況については,実施している者68.4%,未実施の者31.5%であった。また,歯科医師,歯科衛生士における禁煙支援の関連要因は,歯科医師ではKTSND得点基準範囲9点以下,重度歯周病と喫煙との関連について知識がある者,歯科衛生士は調査した項目では関連がみられなかった。歯科医師の禁煙支援の関連要因は,禁煙に対する意識が高く知識を持つ者が禁煙支援をしていた。同様に,アメリカの歯周病専門医を調査した先行研究では,歯周病専門医の禁煙支援を阻害する要因として,禁煙支援の訓練不足や個人的興味の不足が挙げられている23)。一方で,歯科衛生士は,個人の知識や認識で禁煙支援をしているわけではなかった。日本の歯科衛生士の禁煙支援に関連する要因を調査した先行研究は検索する限りみられない。日本の歯科領域の医療職に対する禁煙支援の実施状況を調査した先行研究では,禁煙支援の阻害要因として,知識と訓練の不足が挙げられている24)。本研究においても,KTSNDの質問項目において,喫煙は習慣であると回答した者が68.3%と半数を超え,喫煙がニコチン依存症という疾患であり,習慣ではないことの知識が不足している者が多かった。さらに,歯周病患者の喫煙については,79.3%の者が吸うべきではないと回答したが,歯周病患者以外については,65.3%に留まった。喫煙は歯周病の危険因子であり,数々の歯科疾患に関連するため,歯周病患者以外でも禁煙を勧める必要がある10)。したがって,歯科領域の医療職の禁煙支援の意識や知識を高めるためにも禁煙支援の訓練,すなわち研修会等が重要と考えられた。一方,本研究における禁煙支援を行わない理由は,時間がない,保険点数にならないが上位に挙げられ,他の治療と並行し禁煙支援を行うことは難しく,禁煙支援を行っても保険診療で算定できないことが大きな阻害要因になっていることがわかった。また,禁煙支援について,方法がわからない,資料がない等も大きな阻害要因となっていた。今後は,日本歯周病学会で示した禁煙支援の手順書10)に加えて,より実践的な歯科領域において誰でも使用できる禁煙支援教材を作成する等,自信をもって禁煙支援ができるようなサポート体制が必要である。
本研究にはいくつかの限界があり,1つ目に,前述したように回収率が低い点,2つ目に,本研究はwebでの質問紙調査であり,喫煙状況を正確に把握できない情報バイアスが存在する可能性もある。このような限界はあるが,本研究は日本歯周病学会会員の喫煙状況をHTP含め詳細に調査した最初の研究であり,今後の歯科領域の医療職に対する禁煙推進に役立つ知見になると考えた。
本研究における歯科医師および歯科衛生士の喫煙率はこれまでの調査と比べて低かった。歯科医師では,喫煙に対する正しい知識や認識が高いことが禁煙支援の関連要因であった。一方,歯科衛生士は,知識や認識に関係せず,働く場所の環境によって禁煙支援を実施している可能性があった。今後,禁煙支援の知識や認識の普及等の禁煙教育により,歯科領域で働く医療職の禁煙支援実施率の向上をめざす必要があると判断した。また,歯科でのKTSNDや禁煙支援の先行研究は少ないため,診療に従事している医療従事者のKTSNDや禁煙支援に対する研究を行い,より禁煙支援を行いやすい環境を作ることが急務であると考えた。
本研究を行うにあたり,協力いただいた日本歯周病学会会員の皆様に厚く御礼申し上げます。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。