日本歯周病学会会誌
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原著
臼歯部の歯周組織再生療法による骨再生と咬合支持域に関する後ろ向き研究
齋藤 由未五十嵐 憲太郎伊藤 正一目澤 優高井 瑞穂高井 英樹小方 賴昌中山 洋平
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電子付録

2025 年 67 巻 4 号 p. 130-142

詳細
要旨

歯周基本治療の原則は,プラークコントロールと咬合支持の確立である。しかし,リグロスを含めた歯周組織再生療法を対象として,術前の咬合支持域によって,アタッチメントゲインや骨再生量にどの程度の影響を与えるのかは不明である。

本研究の目的は,術前の咬合支持域数による歯周組織再生療法の治癒への影響について,骨充填率をアウトカムとして統計的に解析することである。

2017年2月~2024年6月まで,日本大学松戸歯学部付属病院で実施された歯周組織再生療法の臼歯部症例を対象とした。除外基準に従って対象者を決定し,対象部位以外の咬合支持域数によって2つのグループに分けた。臨床パラメータの治療効果は術前,術後12か月で評価した。主要評価項目は術後12か月のエックス線画像上の骨充填率に設定した。咬合支持域数とエックス線画像による骨充填率の関係を統計学的に分析した。各グループにおいて,術後12か月のプロービング深さ(probing depth,PD),臨床アタッチメントレベル(clinical attachment level,CAL),プロービング時の出血(bleeding on probing,BOP)および骨充填率は改善したが,グループ間での骨充填率に有意差は認めなかった。PD減少量,CAL獲得,BOP改善,動揺度およびプラーク付着の改善,骨充填率は術前の咬合支持域数と関連していなかった。

本研究は,臼歯部の歯周組織再生療法において,治療効果が咬合支持域に大きく影響を受けない可能性を示唆していた。この見解は,咬合関連以外の術前因子の方が,よりコントロールする必要がある可能性を示唆していた。

Abstract

In initial periodontal therapy, plaque control and occlusal establishment are regarded as fundamental principles. However, it remains unclear whether attachment gain and bone regeneration are influenced by preoperative occlusal support or by regeneration therapies, such as recombinant human fibroblast growth factor-2 application. This study was aimed at determining whether the preoperative occlusal support status might affect periodontal tissue regeneration therapy outcomes. Data of cases of periodontal tissue regeneration therapy performed for the molars at the Nihon University Matsudo Dental Hospital between February 2017 and June 2024 were retrospectively reviewed. The final subjects were selected after applying exclusion criteria and divided into two groups by the number of occlusal support areas, excluding the targeted sites. Clinical parameters were assessed pre- and postoperatively, and improvements in the clinical outcomes and radiographic bone fill post-surgery were compared between the two groups. The primary outcome was radiographic bone fill at 12 months post-surgery, and the relationship between the occlusal support areas and radiographic bone fill was analyzed statistically. Both groups showed notable improvements in probing depth (PD), clinical attachment level (CAL), and bleeding on probing (BOP) at 12 months, whereas radiographic bone fill did not differ substantially between the two groups. Moreover, PD reduction, CAL gain, BOP improvement, plaque control, and bone fill were not associated with the number of preoperative occlusal support areas. Thus, in periodontal tissue regeneration therapy, the outcomes do not appear to be affected by preoperative occlusal support. Overall, this study suggests that occlusal condition is not a critical determinant of the success of regenerative therapy, emphasizing the need to identify alternative preoperative factors with greater predictive value for clinical outcomes.

緒言

慢性歯周炎は歯周組織の進行性の破壊を特徴とし,アタッチメントロスをともなう歯槽骨の吸収,歯周ポケットの形成およびプロービング時の出血(bleeding on probing,BOP)を主な特徴としている1)。慢性歯周炎の悪化によって破壊された歯周組織の病態と咀嚼能力の低下とは密接な関連があり,咬合支持は咀嚼能力に影響を及ぼす要因の一つである2)。歯周ポケット深さが深いと咀嚼能力が低くなり3),歯槽骨高さの減少や残存歯の動揺の増加と咀嚼能力の低下は関連があるという報告もある4)。歯周炎患者の客観的咀嚼能率と歯数,口腔衛生状態(Quigley-Hein指数),臨床アタッチメントレベル(clinical attachment level,CAL),プロービング深さ(probing depth,PD),歯の動揺度,機能的咬合単位との間の相関関係についても報告されている5)。さらに,歯周組織の悪化が加齢に伴う咀嚼能力の低下リスクを高めることが報告されており,高齢であっても,歯周組織の改善の重要性が示唆されている3)

欧州歯周病学会連合(European Federation of Periodontology,EFP)の歯周病治療ガイドラインにおけるステージごとの歯周治療の流れにおいて,歯周病治療は,3つのステップと支持的歯周ケア(supportive periodontal care,SPC)によって行うとしている6)。治療の第1段階として歯肉縁上のバイオフィルムを除去し,リスク要因のコントロールと行動変容を促す(ステップ1)。第2段階として歯肉縁下バイオフィルムと歯石除去を目的に原因関連療法がおこなわれる(ステップ2)。再評価検査後,深い歯周ポケットが残存している場合は治療の第3段階として外科的介入を行う(ステップ3)。SPCでは,歯周組織の病状安定の管理を行6),このタイミングで,矯正や最終補綴を行うこととしている。

ステージIVの歯周炎では,治療の流れはステージIIIに対する治療と基本的に同じであるが,残存歯が少ない場合や重度の水平的歯槽骨の欠損の場合,フルアーチリハビリテーションが必要となる。ステップ3の再評価後,中間欠損修復およびインプラント治療を行うのが理想ではあるが,歯周治療のステップ1~3と同時,あるいはステップ1~3内で固定や補綴物による追加介入が必要となるケースもある7)

これらの背景から,まず咬合支持を確立してから歯周外科処置を実施することが歯周治療の基本的な考え方である。しかし,実際には必ずしも固定性の咬合支持を得られるとは限らない現状である。特に,隣在歯がない孤立歯や,連続した多数歯の欠損がある場合には,ステップ2までに固定性の咬合支持を獲得することが困難である。また,支台装置の数や分布,補綴装置の安定性によっては,固定性の咬合支持の獲得に限界が生じる。このような場合,固定性の咬合支持を得られないまま,歯周組織再生療法を実施せざるを得ない。

歯周組織再生療法によって,失われた組織を修復あるいは再生し,獲得した支持組織を長期的に維持することで,歯の寿命を延ばすことが可能となった。その中でも,骨移植術8),組織再生誘導法(guided tissue regeneration,GTR法)9),エナメルマトリックスタンパク質(エムドゲインゲル,enamel matrix derivative,EMD10))およびヒト組み換え塩基性線維芽細胞成長因子(recombinant human fibroblast growth factor-2(rhFGF-2)製剤,リグロス11))が広く使用されている。リグロスは,rhFGF-2を精製したタンパク質で,歯周組織の再生を促す製剤であるが,術式や病態によって治療効果の差が生じる12)。また,動揺歯における歯周組織再生療法(骨移植術,GTR法,EMD)の予後は,非動揺歯と比較して,有意な治療差は生じなかったとする報告があるが13),この報告にはリグロスの症例は含まれていない。さらに,これらの報告は,術前の咬合支持状態が歯周組織の再生量にどのような影響を与えるのかについては不明確である。

本研究では,リグロスを含めた歯周組織再生療法を対象とし,歯周外科手術前の咬合支持の状態が,歯周組織の再生量(骨充填率)に与える影響について検討した。過去の診療データを用いて,臼歯部の骨欠損に対して歯周外科手術を行ったデータを対象に解析した。設定した除外基準に従って,対象部位を選出し,咬合支持域の数によって2群に分けた。グループ1を咬合支持域が3領域残存群,グループ2を咬合支持域が2領域以下残存群とした。各群内で歯周外科治療前後の臨床パラメータの改善度とエックス線画像による骨充填率を評価し,主要評価項目を治療後12か月のエックス線画像による骨充填率として,咬合支持域の数と歯周組織再生量との関連性を分析した。

材料と方法

1. 被験者

2017年2月~2024年6月までに,日本大学松戸歯学部付属病院(千葉県松戸市)で歯周組織再生療法を受けた臼歯部の慢性歯周炎部位を対象として,後ろ向き観察研究を行った。日本大学松戸歯学部倫理委員会にて本研究の承認を得た(EC24-006)。研究調査期間に行われた歯周組織再生療法の全件数を電子カルテの記録から抽出し,対象部位の診療録の記載記録と臨床データから(1)前歯部の手術(2)エックス線写真で垂直的骨欠損が不明瞭(3)喫煙者(4)歯周病のリスクとなる全身疾患患者(5)歯周組織検査・エックス線検査が評価期間外(評価期間:12か月±4週間)(6)再評価検査の臨床パラメータが不十分なものは除外した。

対象部位となった患者の口腔内情報として,残存歯数,平行法によるエックス線画像および義歯装着の有無について,診療録記載から記録し,Eichnerの分類14,15)に従い,中心咬合位での上下顎小・大臼歯群による4つの咬合支持域を確認した。残存歯,インプラント,固定性欠損補綴装置(ブリッジ)での咬合支持については,咬合支持「有」とし,可撤性義歯による咬合支持については咬合支持「無」とした。また,手術対象部位以外の咬合支持域において,支持域に動揺歯が含まれているか調査した。支持域に動揺歯(Millerの分類1度以上)が1歯でも存在した場合,支持域「無」として判別し,支持域に動揺歯が存在しない(Millerの分類0度以下)場合,支持域「有」とした。動揺歯が存在しない咬合支持域が3領域存在するグループ(グループ1)と,それ以外の0,1または2領域存在するグループ(グループ2)で分類した。手術部位以外の咬合支持によって,手術部位の咬合負担が軽減するかどうかを検証することが本研究の主目的なため,手術部位の対合歯は咬合支持域に含めなかった(図1)。

図1

研究のフローチャート

調査期間中に合計735部位が歯周組織再生療法を受けた。除外基準は(1)前歯の手術(2)エックス線写真で垂直的骨欠損の診断が不明瞭(3)喫煙者(4)歯周病のリスクとなる全身疾患患者(5)歯周組織検査時期が期間外(6)12か月後の歯周組織検査項目が不十分(7)エックス線検査時期が期間外,の項目に従った。対象は最終的に145部位が選出された。動揺歯を含まない咬合支持域数によって,咬合支持域が3領域存在する群(グループ1)と0~2領域存在する群(グループ2)に対象部位が分けられた。

2. 歯周組織検査および骨充填率の算出

対象者の歯周外科治療前(Base line,BL),術後12か月における臨床パラメータとエックス線画像記録を調査した。主要評価項目は術後12か月におけるエックス線画像上の骨充填率12)とした。手術対象部位以外の残存歯が手術部位の咬合負担を軽減している可能性があるという考え方を検証するために,手術対象部位以外の咬合支持域の数を,咬合支持域数として記録した。副次的評価項目はプロービングデプス(probing depth,PD),CAL,歯の動揺度(Tooth mobility,TM),プロービング時の出血(bleeding on probing,BOP)およびプラークの付着の有無の改善度とした。これらの数値は歯周精密検査時のデータから記録し,プラーク付着に関してはプラークコントロールレコード(PCR)の値から記録した。影響因子になり得る骨欠損形態,骨移植材の有無及び種類,切開方法(mPPT, modified papilla preservation technique;PPT, papilla preservation technique;SPPT, simplified papilla preservation technique)を記録した。

骨充填率は歯周組織再生療法を実施した部位の手術前および術後12か月経過時に平行法でエックス線検査を行ったものとした。エックス線写真の読影は歯周病認定医1名(YS)によって実施した。骨欠損深さと術後の垂直性骨欠損の新生骨の増加率を評価することを目的に,手術前後のエックス線写真を比較し(Scheiらの方法),骨充填率を算出した16)。手術前後のエックス線画像上で,骨欠損歯槽骨頂部(B)を被験歯根面表面に投影し,骨欠損底部(C),根尖(D),セメント―エナメル境(A)を規定した。これらの数値を用いて,エックス線の照射角度などに生じる撮影誤差を調整した計算を行い,骨充填率とした(図2)。

潜在的なバイアスを避けるため,骨充填率は咬合支持グループ分けをする前に算出した。PD,TM,BOPおよびプラーク付着状態を含む,術前後の歯周組織検査は術者によって行われた。PDおよび歯肉退縮量の測定には歯周プローブ(CP11 Color-Coded Probe,Hu-Friedy,USA)を使用した。CALはPDと歯肉退縮量の記録から算出した。動揺度はMillerの歯の動揺度の分類17)で診断した。BOPとプラーク付着状態は,有を「1」,無を「0」として,数値化しカテゴリ変数として扱った。

図2

骨充填率の算出方法

A,CEJ(cemento enamel junction);B,骨頂;C,骨欠損底部;D,根尖。1は術前,2は術後12か月。AおよびDの定点を利用して画像補正を行った。この症例の場合,B2C2の補正距離2.686=2.84×(9.57/10.12),骨欠損の高さの増加量1.834=4.52-2.686,骨充填率(%)=(4.52-2.686)/4.52×100=40.6%であった。

3. 歯周組織再生療法

すべての手順を十分に説明し,手術に関して,対象患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。すべての歯周組織再生療法は通法に従い,歯周病専門医4名(YO,YN,HTおよびMM)と歯周病認定医3名(MT,YS,SI)によって行われた。追加照明下あるいは肉眼で行われた。原則的に基本治療後の歯周組織検査の結果,動揺度2度以上あるいは術中の動揺度増加が懸念される場合,術前に主治医の判断で暫間固定を行ってから手術を行った。切開方法は,骨内欠損部位の両隣接歯の歯根間距離に従い,非PPT(スキャロップ切開),mPPT,PPT,SPPTのいずれかが選択された。粘膜骨膜弁の剝離・翻転後,骨内欠損部の肉芽組織除去およびSRPを実施し,骨内欠損形態は,1壁,2壁,2‐3壁混合型および3壁性垂直性骨欠損のいずれかで記録された。骨内欠損は2壁性と1壁性をNon-containedに,2-3壁性,3壁性の骨内欠損はContainedに分類した。再生薬剤および材料には0.3%rhFGF-2,EMDまたはGTRのいずれかが行われ,骨移植材には,自家骨移植(autogenous graft:AG),ウシ由来ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite:HA,BONEJECT,KOKEN,Japan),脱タンパク化ウシ骨ミネラル(deproteinized bovine bone mineral:DBBM,Bio-Oss,Geistlich,Switzerland),炭酸アパタイト(CO3Ap,Cytrans Granules,GC,Japan)のいずれかが使用された。歯肉弁は,単純縫合,8の字縫合およびマットレス縫合のいずれかによって復位・縫合された。テフロンコーティング縫合糸(BioFit-D:TefdesserII,CROWNJUN,Japan)またはナイロン糸(BioFit-D:Nylon,CROWNJUN,Japan)のいずれかが使用された。抗生物質(アジスロマイシン500 mg/日)が3日間処方された。鎮痛剤(ロキソプロフェンナトリウム60 mg)は必要に応じて処方された。術後2週間,手術部位のブラッシング禁止,毎食後と就寝前の0.2%塩化ベンゼトニウムによる洗口を指示した。手術後約14日で縫合糸を抜去した。その後,手術後約1か月後のフォローアップにて一般的な口腔ケアを指示し,術後3,6および12か月にて歯周病検査による再評価を実施した。

4. 統計解析

臨床パラメータは,平均±標準偏差で示した。BLと術後12か月の臨床パラメータ(PD,CAL,TM)の群内比較には,ウィルコクソン符号付順位和検定を用いた。TMは連続変数として数値を扱った。BOP,プラーク付着状態は,「変化なし」を除外し,「悪化」と「改善」のみで,マクネマー検定およびカイ2乗検定を行った。変化なしを除外せず,「悪化」,「変化なし」および「改善」の3群間においても,解析方法の違いによる齟齬がないか確認のため,カイ2乗検定を行った。

臨床パラメータの改善量(PD減少量,CALゲイン,動揺度改善および骨充填率の改善)を算出し,Mann-Whitney U検定を使用して,グループ1と2の群間比較を行い,この統計解析には,Statcel-The Useful Addin Frome on Excel-4th edを使用した。BOP改善,プラーク付着の改善の解析では,統計解析には,SPSS Statistics Standard Ver30.0を使用した。

咬合支持域の定義において,動揺歯を含むか含めないかで相違が生じないかをスピアマンの順位相関係数を算出して確認した。対象部位隣接歯の欠損状態によって,臨床パラメータの改善度が異なるかどうかについては,グループ1および2をサブグループ化した後,Mann-Whitney U検定を使用して,グループ1と2のサブグループで群間比較を行った。

手術の種類別に臨床パラメータの改善度が異なる可能性があったため,FGF-2製剤単体,FGF-2製剤+骨補填剤,EMD単体およびEMD+骨補填剤を使用した手術4群をサブグループ化し,Mann-Whitney U検定を使用して,それぞれグループ1および2の群間比較を行った。

結果

1. 研究対象部位のプロファイリング

研究調査期間中において,計735部位に歯周組織再生療法が行われた。除外基準に従い以下のように対象部位が選定された。1)手術部位が前歯部である(85部位),2)エックス線画像で垂直性骨欠損が不明瞭(321部位),3)喫煙者である(58部位),4)歯周病のリスクとなる全身疾患がある(10部位),5)歯周組織検査が評価期間外(評価期間:12か月±4週間,62部位),6)歯周組織検査項目が不十分である(15部位),7)エックス線検査が評価期間外(評価期間:12か月±4週間,39部位)は除外され,対象部位は最終的に145部位となった(図1)。対象部位を含む患者の年齢は36~80歳で,平均年齢は54.27±10.02歳,男性22名(33部位),女性51名(112部位)であった。被験歯種は,小臼歯52部位,大臼歯93部位だった。Millerの歯の動揺度の分類17)を用いて検査した結果,Class 0が130部位,Class 1が14部位,Class 2が1部位だった。手術部位以外の咬合支持域数は3領域存在群が91部位,2領域存在群が23部位,1領域存在群が13部位,支持域無群が18部位だった。術後12か月のPD減少量は2.81±1.65 mm,CALゲインは2.57±1.81 mm,BOPの改善は0.31±0.66,プラーク付着状態の改善は-0.06±0.61,エックス線画像による骨充填率は40.1±20.65%だった。骨欠損形態について,Non-containedは102部位(2壁性68部位,1壁性34部位)で,Containedは43部位(2-3壁性7部位,3壁性36部位)であった。歯周組織再生療法の手術法について調査した結果,自家骨移植術およびGTR法単独での施行部位はなかった。GTRと自家骨移植術の併用療法は1部位,EMD単独使用が15部位,EMDと自家骨移植術との併用療法が8部位,EMDとCO3Apとの併用療法が1部位,EMDとDBBMとの併用療法が4部位あった。rhFGF-2単独使用が60部位,rhFGF-2と自家骨移植術との併用療法が54部位,rhFGF-2とHAとの併用療法が2部位であった。切開方法の調査結果,mPPTは4部位,PPTは8部位,SPPTは4部位で,残りの129部位はスキャロップ切開であった。咬合支持域別のグループ分けではグループ1は91部位,グループ2は54部位であった(表1)。

表1

対象プロファイリング

2. 咬合支持域各群の治療効果と群間比較

グループ1(咬合支持域3)の対象は男性14名(16部位),女性35名(75部位)で,平均年齢は54.32±10.57歳であった。グループ2(咬合支持域0-2)の対象は男性8名(17部位),女性17名(37部位)で,平均年齢は54.19±9.02歳であった。各グループのBLと術後12か月後の臨床パラメータを群内比較して術後の改善を分析した。その結果,グループ1において,PD,CALおよびBOPは統計的有意に改善した。一方,グループ2においては,PD,CAL,TMおよびBOPが統計的有意に改善した。グループ1および2の代表的な症例を図に示した(図3, 4)。垂直性骨欠損部の歯槽骨の再生による平坦化が明確に認められた。プラークの付着状態は,2群とも統計的有意差を認めなかった。

臨床パラメータの改善度に関して解析した結果,術前の咬合支持域数によって,PD減少量,CALゲイン,BOP改善,動揺度改善,プラークの付着状態改善および骨充填率の改善に関して,すべての項目で統計的有意差を認めなかった。BOPの改善およびプラークの付着状態について,まず「変化なし」の症例を除外し,「改善」と「悪化」のみで分析を行った。その結果,プラークの付着状態において有意差は認められなかった。BOPの改善に関しては,マクネマー検定の適用が困難であったため,BOPの改善およびプラークの付着状態について,カイ2乗検定を用いて分析したが,いずれも統計的な有意差は認められなかった。さらに,「悪化」,「変化なし」,「改善」で行った分析ではBOP改善,プラーク付着状態改善に関して,統計的有意差はなかった(表2,参考資料1)。

図3

グループ1(咬合支持3領域群)の症例

66歳の女性。術前(A,B,C,D,E),手術時(F,G),および術後12か月(I,J,K)。A,上顎の咬合面観。B,下顎の咬合面観。C,エックス線画像,#45遠心側の明瞭な垂直性骨欠損。D,頬側面観。E,舌側面観。F,搔爬後(2壁性骨欠損)。G,rhFGF-2製剤の塗布。H,縫合後。I,再評価(骨充填率49.3%)。J,頬側面観。K,舌側面観。CALゲインは3 mm,PDは3 mm減少した。

図4

グループ2(咬合支持2領域群)の症例

37歳の女性。術前(A,B,C,D,E),手術時(F,G),および術後12か月(I,J,K)。A,上顎の咬合面観。B,下顎の咬合面。C,エックス線画像,#14遠心側の明確な垂直性骨欠損。D,頬側面観。E,口蓋側面観。F,搔爬後(2-3壁性骨欠損)。G,rhFGF-2製剤の塗布と自家骨移植。H,縫合後。I,再評価(骨充填率69.7%)。J,頬側面観。K,口蓋側面観。CALゲインは2 mm,PDは2 mm減少した。

表2

咬合支持域別の各治療効果と群間比較

3. 咬合支持域と術前臨床パラメータとの相関関係

今回の研究では,咬合支持域の条件として動揺歯を含まないものとしたため,動揺歯を含んだ場合と含まない場合で,術前の臨床パラメータとの関連性に相違がないかを分析した。その結果,咬合支持域に動揺歯を含んだ場合および含めない場合ともに,歯の動揺度とは統計的に有意な負の相関を認めたが,他の臨床パラメータとの有意な関連性は認めなかった(参考資料2)。

4. 咬合支持域別における隣接歯欠損の影響,臨床パラメータの群間比較

対象部位隣接歯の欠損状態で,術後アウトカムに影響があるかを分析するため,各群の対象部位について「隣接歯欠損あり」および「隣接歯欠損なし」のサブグループを作成した。グループ1では「隣接歯欠損あり」40部位,「隣接歯欠損なし」51部位が対象となり,グループ2では「隣接歯欠損あり」22部位,「隣接歯欠損なし」32部位が対象となった。PD減少量,CALゲインおよび骨充填率は,各群で有意に改善を認めた。グループ1においては,隣接歯の欠損がない場合,欠損歯がある場合と比較して,有意に歯の動揺の改善を認めた。グループ2においては,隣接歯の欠損がない場合,欠損歯がある場合と比較して,PD減少量とCALゲインが大きい傾向を示したが,有意差はなかった(表3)。

手術の種類別に臨床パラメータの改善度が異なる可能性があったため,FGF-2製剤単体,FGF-2製剤+骨補填剤,EMD単体およびEMD+骨補填剤を使用した手術4群をサブグループ化し,それぞれグループ1および2の群間比較を行った。その結果,それぞれ手術法のサブグループにおいて,グループ1および2の群間で,臨床パラメータの改善度の統計的有意差は認めなかった(表4)。

表3

咬合支持域別における隣接歯欠損の影響,臨床パラメータの群間比較

表4

手術別 臨床パラメータの改善度の咬合支持域別群間比較

考察

1. 対象部位の治療効果について

今回の後ろ向き研究では,対象部位が145部位となった。エックス線画像診断を正確に行うために,画像の鮮明さと検査時期を厳密にし,対象者を限定的にした結果である。対象部位の術後12か月のPD減少量(2.81±1.65 mm),CALゲイン(2.57±1.81 mm),BOP改善(0.31±0.66)およびエックス線画像による骨充填率(40.1±20.65%)から判断すると(表1),他の後ろ向き研究と比較しても,適正な歯周組織再生療法が行われたといえる12)

2. 咬合支持域の影響について

動揺歯を含まない歯が,咬合支持を担っていると考え,本研究では固定された咬合支持(ブリッジ,インプラント)のみを対象とし,動揺歯や可撤性義歯は咬合支持として含めなかった。これは,動揺歯や可撤性義歯の咬合支持能力が固定されたものと比較して不安定であり,咬合支持として十分な機能が得られないと考えたためである。しかし,臨床的には動揺歯や可撤性義歯も一定の咬合支持の役割を果たしていると考えられる。動揺歯を含めた場合と含めなかった場合のBL時の臨床パラメータとの相関関係を分析した結果,各群でともに,有意な負の相関関係を示したことから,咬合支持域数が多いのと動揺度が小さいことを示していた。さらに,各相関係数を群間比較した結果,有意な相関関係は見られなかった(p=0.5392,参考資料2)。この結果は,咬合支持域数に動揺歯を含めた場合と含めなかった場合で,結果に大きな影響を与えなかったことを示唆していた。

グループ1(咬合支持3領域)とグループ2(咬合支持0-2領域)の各群において,術後12か月でPD,CALおよびBOPの有意な改善が認められた(表2)。グループ2では,歯の動揺の改善傾向も認められた。しかし,群間比較した結果,術前の咬合支持域によって,PD減少量,CALゲイン,BOP改善,歯の動揺度の改善および骨充填率について,統計的有意差を認めなかった。この結果は,手術部位以外の動揺歯,可撤性義歯による咬合支持の確立が,患者の咀嚼機能において重要な役割を果たし,手術部位の咬合負担を軽減している可能性を示唆していた。

一般的に治療部位の歯の動揺は治療成績に影響し,歯周組織再生に悪影響を及ぼしていると結論付けられている18)。しかし,Cortelliniらは歯周病学的問題により予後不良と定義された歯に対し,固定を行った上で歯周組織再生療法を行うことで歯の保存の可能性が大きくなることを示している19)。したがって,治療部位の動揺は厳密に管理する必要がある。現実的には治療部位以外の動揺や可撤性義歯による咬合支持は,炎症が軽減され機能的に問題がなければ,許容されることがある。特に広範囲な歯周組織破壊や多数歯欠損の場合,これらの要素がなければ十分な咀嚼機能が得られないため,過度に動揺を排除することよりも,患者の全体的な咀嚼機能と生活の質を考慮した治療計画が重要である。

3. 隣接歯の有無の影響について

最後方臼歯の歯周組織再生療法の治療効果について報告されている20)。この研究では,PISAおよび初回来院年齢は,rhFGF-2による骨充填率に有意な影響を及ぼさなかったが,最後方臼歯は,rhFGF-2の骨充填率に不利な影響を与えることを示し,咬合のリスクを示唆するものである。同様の考え方から,より近くで手術部位の咬合負担を軽減する可能性のある隣接歯の有無が,歯周組織再生療法の治療効果に影響を及ぼしているかを解析した。隣接歯欠損あり群(対象部位の片側あるいは両側欠損,62部位対象,うち最後方臼歯51部位)と隣接歯欠損なし群(83部位)において,臨床パラメータの改善度を群間比較した結果,統計的有意差はなかった(データは示していない)。しかし,興味深いことに,咬合支持域が少ない場合,PD減少量とCALゲインが小さい傾向を示した(表3)。この結果は,全顎的な咬合支持域数よりも,隣接歯の存在の方が,歯周組織再生療法の予後に影響を与える可能性を示唆していたが,統計的有意差はなかった。さらに,隣在歯の存在は,単独での咬合負担の軽減および暫間固定時の咬合圧分散に寄与する可能性があり,特に手術対象部位に加わる咬合圧を軽減する上で,隣在歯が直接的に関与している可能性があった。術後に一時的にみられる動揺においても,隣在歯の役割は大きいと考えられた。したがって,今後の研究では,隣在歯の有無が咬合力の分布および術後の安定性に及ぼす影響について,より詳細に検討する必要がある。

4. 研究の限界と今後の展望

本研究にはいくつかの限界があった。まず,咬合支持が少ない症例,特に咬合支持が2つ以下の研究対象が限られており,十分なサンプルサイズが得られなかった。そのため,多変量解析を行うのが困難であった。広範囲な歯周組織破壊を伴う症例では,再生療法が適応可能な病態よりも重度である場合が多いことが影響したと思われる。本研究では,可撤性義歯の安定性など,咬合支持の質に関する詳細な評価を後ろ向きデータで取り扱うことが出来なかった。さらに,動揺歯が咬合支持域として機能しているかは明確な基準がなく,不透明である背景から,今回の研究では,動揺歯は咬合支持機能に乏しいという考え方を基準として,動揺歯は咬合支持域数として含めなかった。また,評価方法として規格エックス線検査ではなく平行法による骨充填率の算出となり,正確な骨再生量の評価に至らなかった可能性があった。この結果は,CALゲインによる副次的評価項目で補った。したがって,これらの不確定要素が再生療法の効果に影響を与える可能性があったため,データ解析結果の解釈には注意する必要があった。

今回の研究は,前向き研究のデザインでは実施が困難である咬合因子の抽出および解析を行い,後ろ向き研究の利点を最大限に活かして実施することができた。主要項目の評価方法,評価期間,評価の信頼性および咬合支持域の盲目化での評価を徹底し,選択バイアスを可及的に低リスクにし,多くの症例を対象として動揺歯の有無を考慮した堅固な咬合支持域を評価した点で,より正確な結果が得られるように試みた。今後は,長期的な経過観察を行い,再生療法の効果と咬合支持の関係をさらに深く探求する必要があり,倫理的配慮が行き届いた前向き研究も検討する必要がある。

結論

本研究の結果は,限られた研究デザイン・解析方法であったが,臼歯部の歯周組織再生療法の治療効果において,咬合支持数は大きく影響せず,咬合因子以外の影響因子の重要性が示唆された。しかし,動揺歯や可撤性義歯も臨床的に重要な咬合支持の役割を果たしている可能性があり,歯周組織のより効果的な再生を達成するためには,咀嚼機能および咬合支持として機能する残存歯の確保を考慮した治療計画が必要であると思われる。

今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。

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