抄録
高度の歯周病罹患歯における歯髄の変化を病理組織学的に検索した。歯周病罹患歯を13歯, 対照歯として5歯を用いた。まず臨床的ならびにレ線学的に被検歯の歯周組織と歯髄の診査を行った後, 前固定, 脱灰, 後固定, エポン包埋の一連の操作を行い, 厚さ1μmの薄切切片を作成した。トルイジン青染色を施し, 光学顕微鏡学的に観察した。
その結果, 高度の歯周病罹患歯13歯中, 正常歯髄6歯, 歯髄充血2歯, 炎症性変化1歯, 慢性歯髄炎1歯, 歯髄壊死3歯が観察された。歯周病の臨床的程度と歯髄の変化との関連性をみると, CEJ↔BP (エナメル・セメント境から歯周ポケット底部までの長さ) が10mm, レ線学的骨吸収率が100%に達すると歯髄に病変が見られる傾向が確認された。臨床的に死歯は, 組織学的に歯髄壊死であり, 細菌侵入がみられた。