抄録
ニフエジピン服用の歯肉増殖症患者の歯周組織を臨床的に観察し, その歯周ポケット内微生物を位相差顕微鏡的に検索するとともに, 増殖歯肉を病理組織学的に観察した結果, つぎのような結論を得た。すなわち, 歯肉増殖量とプラーク指数, 位相差顕微鏡によるポケット内微生物の総微生物数および運動性桿状菌とスピロヘータの構成率との間には相関性が認められなかった。また, 増殖歯肉の光顕所見では, 上皮組織は肥厚し, 上皮突起は細くてやや長く, 密なコラーゲン線維束や血管, 中等度の炎症細胞浸潤が認められ, その炎症細胞のほとんどは形質細胞であった。さらに, コラーゲン線維束の間に著しく拡張した血管が認められた。一方, 電顕的には, 密なコラーゲン線維の間に豊富な粗面小胞体を有する紡錘形の線維芽細胞や顆粒状物質が認められ, また, 折れ曲がった多数のコラーゲン原線維を細胞質に含む線維芽細胞がみられた。