歯周病に関する科学的な発展は歯科および医科の医療に新しいパラダイムを提示しつつある。歯周炎が各種全身疾患のリスクを増強するということが明確になってきたからである。歯周病は顕著なグラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染性の疾患であるが, その病態は局所の宿主反応によって規定されている。したがって, 歯根面のバイオフィルムだけでなく-歯周炎局所の炎症反応を修飾・調整している仲介分子が, 糖尿病, 心臓冠動脈疾患, 低体重児出産, 呼吸器疾患などの全身疾患症状のマイナス要因とみなされるのである。このように歯周病は健康と福祉の必須要因として認識されつつある。
本論文では, “健康寿命”を短縮している“生活習慣病”の観点に立って, 1) 歯周病の病態・病因, 2) 歯周炎と全身疾患の関わり, そして3) 歯周病の保健の意義を論ずる。