2021 年 30 巻 2 号 p. 86-96
本研究の目的は,関係性アプローチに則り対象ごとの向社会的行動と関連する向社会的動機づけの差異を多面的に検討することである。動機づけは,自己決定理論の観点から自律的な向社会的動機づけと統制的な向社会的動機づけを扱った。インターネットを通じて小学5年生から中学3年生の子ども1,998名に自記式調査を実施した。変数中心的なアプローチと人間志向的なアプローチによって,対象別の向社会的行動と向社会的動機づけとの関連が検討された。その結果,向社会的行動はその対象によらず自律的な向社会的動機づけと関連していること,見知らぬ人に対する向社会的行動については自律的な向社会的動機づけと統制的な向社会的動機づけが共に関連していることが示された。本研究の結果は,向社会的行動の対象ごとにその動機づけが異なることを実証的に示したものであり,向社会的行動の対象による生起頻度の違いが向社会的動機づけに起因することを示唆するものである。