パーソナリティ研究
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原著
  • 川本 心羽, 石田 靖彦, 中谷 素之
    2025 年34 巻2 号 p. 138-147
    発行日: 2025/10/09
    公開日: 2025/10/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究の目的は,学業的・社会的目標構造と学業的援助要請の相互影響過程について,交差遅延パネルモデルを用いて検討することであった。1, 2学期に各1回調査を行い,2度とも回答した中学生903名が分析対象であった。結果として,向社会的目標構造が適応的援助要請に正,援助要請の回避に負の影響を及ぼすことが示された。規範遵守目標構造から学業的援助要請に対する直接的な影響は見られなかった。目標構造間の相互影響関係について,熟達目標構造が社会的目標構造の2側面に正,遂行目標構造が規範遵守目標構造に負,向社会的目標構造が遂行目標構造に負の影響を及ぼしていた。これらのことから,生徒の学業的援助要請の促進を考えるうえで,学級の社会的側面の影響を考慮することの重要性が示唆された。

  • 白井 真理子, 村井 亜優, 松本 昇
    2025 年34 巻2 号 p. 155-165
    発行日: 2025/10/09
    公開日: 2025/10/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    パーソナリティ特性としての自己愛は,多面的な構造を持つと考えられ,個人レベルにおいては,誇大型自己愛と過敏型自己愛の大きく2つに分類されている。本研究では,過敏型・誇大型自己愛傾向と自尊感情の変動性との関連および,自己愛が自尊感情の変化と出来事の経験数との関連を調整するかどうか検討した。2つの研究を通して,過敏性–誇大性自己愛傾向を測定し,状態自尊感情と出来事の経験数は,7日間にわたって測定された。その結果,両研究において,過敏型自己愛傾向と自尊感情の変動性には正の相関が見られた。また,研究1ではポジティブな出来事経験が多いとき,評価過敏性自己愛傾向が高いほど自尊感情がプラス方向に変化し,誇大性自己愛傾向が低いほど自尊感情がプラス方向に変化していた。本研究の結果より,自己愛のタイプによって自尊感情の変動性との関連が異なることが示唆された。

  • 柴田 康順
    2025 年34 巻2 号 p. 166-176
    発行日: 2025/10/09
    公開日: 2025/10/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究の目的は,ICD-11に準拠したパーソナリティ症の重症度を測定する唯一の尺度であるICD-11 Personality Disorder Severityの日本語版(PDS-ICD-11-J)を作成し,その妥当性と信頼性を検証することである。著者はインターネット調査を実施し,成人291名分のデータを収集した。確認的因子分析の結果,PDS-ICD-11-Jは多くの先行研究と同様に1因子構造が成立し,十分な内的一貫性と再検査信頼性が確認された。相関分析の結果,PDS-ICD-11-Jは,病的パーソナリティ特性,パーソナリティ症特性,同一性機能,対人問題との間に十分な関連が示された。これらの結果から,PDS-ICD-11-Jの妥当性と信頼性が確認された。PDS-ICD-11-Jにより,パーソナリティ症の重症度の簡易的なスクリーニングが可能となるとともに,パーソナリティ症に関する実証研究の成果を国際的に比較検討することも可能になる。

  • 福井 晴那, 小野 聡士, 青木 佐奈枝
    2025 年34 巻2 号 p. 177-188
    発行日: 2025/10/09
    公開日: 2025/10/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究の目的は,COVID-19感染拡大下でカウンセリングに導入された感染防止対策とカウンセリングにおける体験との関連をクライエント視点から明らかにし,今後起こり得る感染拡大時の支援に活かすことにある。感染防止対策(計8種),支援施設の種類(計5種)およびカウンセリング開始時期とその交互作用項と,カウンセリングにおけるクライエントの困難感や懸念,工夫との関連について多変量重回帰分析を用いて検討した。主な結果として,カウンセラーのフェイスシールド着用は会話の貧困化や情報取得・伝達の困難さと正の関連を示し,カウンセラーのマスク着用は安定した心理支援の維持困難感と負の関連を示した。また,約2 mの距離を保持した環境では,クライエントはゆっくり明瞭に話す,確認を多く行う等の伝達の工夫を積極的に行うことが示された。これらの知見から,感染防止対策に対するクライエントと心理職の認識には差異があり,双方の視点からの理解の重要性が示唆された。

  • 本田 真大, 伊藤 崇達
    2025 年34 巻2 号 p. 189-203
    発行日: 2025/10/17
    公開日: 2025/10/17
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では,Boeder et al. (2021)が作成した5因子20項目からなるInterest Development Scale (IDS)をもとに,日本語版IDSを作成し,大学生を対象に検証した。研究1の結果より日本語版IDSとして,5因子構造ではなく,価値,自己調整,情報探索の3因子構造が確認された。研究2では,確認的因子分析を行い,構成概念妥当性が確認された。研究1, 2ともに,内的整合性の観点から信頼性が確認された。また,外的妥当性の観点から,研究1, 2では,一般的個人興味,特殊的好奇心,内発的動機づけ,エンゲージメント,フロー,主観的感情,主観的幸福感,高揚感,グリット,粘り強さを用いて検討した。その結果,Boeder et al. (2021)と同様に本尺度と関連尺度との間に有意な正の相関があり,さらに有意な正の偏相関も確認された。また,下位尺度の一部が弁別性を示した。これらの知見に基づき,本尺度の意義と課題について論じた。

  • 本間 真凜, 小河 妙子
    2025 年34 巻2 号 p. 204-215
    発行日: 2025/11/05
    公開日: 2025/11/05
    ジャーナル フリー

    本研究では,ポジティブ感情とネガティブ感情の不安定性を状態として捉え,感情の不安定性が援助要請に及ぼす影響を検討した。大学生・大学院生403名を対象に,精神的健康度を測定するスクリーニング調査を実施した。その後,52名が本調査として経験サンプリング法を用いた感情の不安定性を測定する調査に回答した。精神的健康度,感情の不安定性,性別,ストレスイベント数,悩みの深刻度,専門機関の利用経験を説明変数,被援助志向性を目的変数とした階層的重回帰分析の結果,ネガティブ感情の不安定性は負の関連を,悩みの深刻度は正の関連を持つことが示された。また,援助要請行動を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,専門的な機関の利用経験は負の関連を,ポジティブ感情の不安定性及び悩みの深刻度は正の関連を持つことが示された。ネガティブ感情が不安定な人の援助要請を促進する支援が必要である。

  • 渡邉 健蔵, 濱口 佳和
    2025 年34 巻2 号 p. 228-242
    発行日: 2025/11/12
    公開日: 2025/11/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,中高生を対象にパーソナリティ要因としてサイコパシー,誇大性自己愛及び過敏性自己愛を取り上げ,道徳不活性化及び各攻撃行動との関連を検討することであった。分析対象者は,中高生503名であった。共分散構造分析の結果,男女共にサイコパシーは道徳不活性化を媒介して攻撃行動に有意な関連を示すことが明らかにされた。また,男子の場合,誇大性自己愛は道徳不活性化を媒介して攻撃行動に有意な関連を示すことが明らかにされた。なお,これらの関連は,媒介分析においても有意であった。本研究の結果により,サイコパシー及び誇大性自己愛の高い者に対して,道徳不活性化への介入の検討が必要であることが示された。

展望
  • 三枝 高大, 下司 忠大
    2025 年34 巻2 号 p. 119-134
    発行日: 2025/10/09
    公開日: 2025/10/09
    ジャーナル フリー

    個人差研究は心理学研究の広範な領域に渡って用いられるアプローチであり,これまでに個人間の測定系列に基づく統計量に基づいて結果を解釈し,様々な知見が蓄積されてきた。しかし,個人差研究における個人間関係を,特定の個人についての知見と誤ってみなしたり,個人内関係と混同したりする研究実践も繰り返し行われてきている。このことは,心理学研究全体の信用を低めるものであると同時に,個人差研究の知見を矮小化し,過小評価することにつながる。本論文はこのような現状に対して警鐘を鳴らすものである。本論文では測定系列の違いに着目して,個人間関係,個人内関係,特定の個人についての知見,のそれぞれが別個の解釈を生むものであることを論じ,それぞれを混同すべきでないことを指摘した。また,個人差研究が個人内関係や特定の個人についての知見を生むための「弱い証拠」ではないことを明示し,個人差研究の意義について議論した。

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