ペストロジー学会誌
Online ISSN : 2432-1532
Print ISSN : 0916-7382
原著
チャバネゴキブリBlattella germanica 成虫の潜伏習性について(2)
谷口 信昭
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1995 年 10 巻 1 号 p. 14-19

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抄録

チャバネゴキブリ雌雄成虫を1容器内に2個の同型のシェルターのある条件で,そのシェルター内における潜伏・集合を観察し次の知見を得た.

1)無卵雌成虫のみでは,雄成虫のみと同様22頭区から2個のシェルターへの分散潜伏が認められたが,個体間距離を示すNND値は小さく,そのヒストグラムの分布は高いピークがなく,むしろ有卵雌成虫に類似していた.このことから,無卵雌成虫の分散潜伏には雄成虫とは異なる要因も作用することが示唆された.

2)無卵雌成虫及び雄成虫の同数同居では,それぞれの場合と異なり,また有卵雌成虫と雄成虫の同居とも異なり,少頭数区である16頭区から2個のシェルターへ分散潜伏する傾向が示された.一方,有卵雌成虫が混在すると,少頭数において分散が示されると共に,多頭数になるほど一方への潜伏頭数が増加するという,いわば潜伏行動の2面性が示された.

3)前報および本試験結果より,次のチャバネゴキブリ集団の動態が推察された.

すなわち,2次的潜伏場所がある場合,1次的潜伏場所の無卵雌成虫および雄成虫は潜伏行動の2面性と活動的での行動特性により漸次的かつ可逆的に2次的潜伏場所へ分散・移出し,繁殖・定着する.さらに,1次的潜伏場所では有卵雌成虫を中核に繁殖が継続されることにより,本集団の場所的拡大と量的増大が起こるものと考えられた.

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© 1995 日本ペストロジー学会
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