地方債は,地方税,地方交付税交付金や国庫支出金とともに,国と地方の財政関係の一環として運営されている。地方債の元利償還金は地方交付税交付金額算出の基礎となる基準財政需要額の算定に影響を与え,地方交付税を通じた異時点間・地域間の所得再分配が明示的に行われている。本稿では,とくに地方交付税交付金を通じた元利償還金の補塡による財政移転に着目する。本稿の目的は,元利償還への補給の規模を明らかにするとともに,このような措置が地方政府の行動に与えた効果について計量的に分析することにある。そのために,これまで利用されることの少なかった基準財政需要の内訳のデータを用いた分析を行った。地方交付税交付金を通じた明示的な地方債の元利補給については,その規模が近年では交付税交付金の30%,公債費支出の40%をこえる規模に達していることが示された。また,このような元利補給が地方債発行を誘導していることが示唆された。