2019 年 15 巻 p. 144-162
本稿は,国土交通省「道路メンテナンス年報」に掲載されている2014年度から2016年度の3年間の点検結果のうち,市町村が管理する橋梁の総合的な健全度を用いて,普通交付税の有無でみた財政要因が橋梁の健全度の差に影響を与えているかを生存時間分析により実証的に明らかにしている。
分析結果からは,積雪の多寡については,積雪が多い地域における橋梁の健全度はそれ以外の地域のそれに比べて平均的に早く低下する。また,財政状況に関しては,交付団体における橋梁の健全度の予防保全段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に長い一方で,交付団体における橋梁の健全度の早期措置段階への到達時間は不交付団体のそれに比べて平均的に短いことがわかった。これは,とくに財政状況の悪い地域や条件不利地域において橋梁の維持補修への資源投入が不十分であったことを示唆しているといえる。