財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
年金財政方式の経済分析
―消費税方式の考察
高畑 純一郎
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2009 年 5 巻 p. 200-219

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抄録

 年金の議論が盛んになってきているが,特に関心がもたれているのは財政方式の問題である。公的年金の財源調達法には比例賃金税方式と消費税方式などがあり,それに依存して資源配分が変化する。本研究では,雇用・年金・債券市場に市場の不完備性を組み込んだ動学的一般均衡モデルで,年金保険料の徴収方法によって資源配分がどのようになるかを観察し,どの程度の年金水準が望ましいのか,どちらの財政方式で厚生が高くなるかについて,日本経済をカリブレートしたパラメーターを設定して,定常状態で評価した。その結果,いずれの方式でも最適な保険料率は0%であることが示された。また,一定の規模で年金を実施する場合,想定するパラメーターの下では,消費税方式の方が比例賃金税方式よりも望ましいことが示された。これは,消費税方式での資本蓄積を妨げない効果等が,比例賃金税方式での雇用リスクを和らげる効果等を上回っているためであると考えられる。

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© 2009 日本財政学会
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